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左慈
1部分:第一章
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世を惑わすものでしかなかった。後に彼は干吉という仙人を殺しその祟りによって死んでいる。そうした考えはこの時から変わりはなかったのである。
「だがな。ああした者を呉に置いておくのは」
「ですが下手に手を下されても殿の権威を失墜させるかと」
「仙人という存在はやはり民にとって尊敬の対象ですし」
「そうだな。さて、どうするか」
「それならば密かに殺してはどうでしょうか」
 ここで高く美しい声がした。孫策達がそちらに顔を向けるとそこには女性と見紛うばかりの美しい顔立ちの青年が立っていた。服もみらびやかなものでその容姿に合っていた。彼が周瑜であった。
「周瑜殿」
 張昭と張鉱は彼の名を呼んだ。周瑜はそれを受けて少し頭を下げた。
「確かに下手に殺しては民への影響が心配されます」
「そう、それが問題ですぞ」
「祟りもありますが」
「祟りはこの際無視しても宜しいでしょう。要は殿が気をしっかりと持たれればよいことです」
「わしがか」
「はい。幸い今殿は心も体も充実しておられます。例え祟りがあろうとも今の殿なら大丈夫です」
「ふむ」
 これは当たっていた。孫策が後に干吉の祟りで死んだのは暗殺を受けその際傷を負っていたからだ。それが回復していない時に受けたからであった。身体が弱っていたのである。
「それでは殺しても問題はないな」
「私はそう思います」
「だが問題は方法か。さて」
 孫策は考え込んだ。そこで張昭が言った。
「それなら左慈を誘い出してはどうでしょうか」
「誘い出すのか」
「はい。殿が外出されて。そしてその時に」
 張昭もここまで来れば止めるつもりはなかった。やるからには成功させなければならない。そう思い主にそう提案したのであった。
「成程な。問題は場所か」
「それなら私がいい場所を知っております」
 張鉱がここで言った。彼も張昭と同じ考えであった。
「おあつらえ向きの庭があります。ここの外れの」
「おお、あそこか」
 孫策はそれを聞いて笑顔で頷いた。
「確かにあそこならいいな。人もおらぬ」
「それに死体は江に放り込むことができますし。どうでしょうか」
「よし、ではそれでいこう」
 彼は決意した。そしてあらためて三人に対して言った。
「明日だ。それでよいな」
「はっ」
 三人はそれを受けて頭を垂れた。こうして孫策は左慈を殺すことにした。翌日の昼彼は左慈をその庭に案内した。孫策も一緒であった。
「ほう、これは」
 左慈は一本の椿の木を見て目を細めた。
「素晴らしい椿ですな」
「ははは、そうでしょう」
 孫策は表面上はにこやかに笑ってそれに応えた。だが心の中では違っていた。
(さて、どうするか)
 彼をどう殺すかだけを考えていた。後ろには馬を繋いでいる。ちらりとそちらを見た。
(使える
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