第6章 流されて異界
第120話 決着
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度もこの二人の内のどちらかがダブルプレイを食らって潰して来た状況と比べると、今回は一切、バットを振る事なく三振。これはつまり、相手が打たせに来ている事に気付いたと言う事なので……。
ただ、これでツーアウト一塁。六組と俺が追い詰められた事に違いはなく……。
ここで打席に立つのは涼宮ハルヒ。俺を妙な賭けの対象にした張本人。ここまでの成績は五打数一安打。はっきり言うと役に立って居ない。
もっとも、この決勝戦。特に三回以降の自称リチャードくんからヒットを打つのは至難の業。相手に有利な――何をやっても相手に有利なように事象が転がって行く、……と言う俺たちに取っては死地に当たるこの場所で、未だ能力に目覚め始めたばかりの彼女では、一本でもヒットを打つ事が出来たと喜ぶべきでしょう。
しかし――
ワンストライク・ワンボールからの三球目。ベルト辺りの高さに入って来た甘いボールを一閃。打球は三遊間を抜けてレフト前へ。
矢張り、少しずつでは有るが、風はコチラ向きへと変わりつつある。
続くは朝倉さん。ここまでは記録上は一安打ですが、実質二安打。
「ボール。ボール、ロー」
まるで機械の如き精確さでストライクゾーンに入って来た球はカット。逆にボールゾーンへと逃げて行く球を見逃し続けた朝倉さん。そして、終に十二球目の低めの球を見送ってフォアボール。
喜怒哀楽がはっきりしていて、感情表現も豊か。どう考えても有希や万結と同じ種類の存在とは思えないのですが、それでも、其処はそれ。ボールの軌道を見極め、カットを続けられたとしても不思議ではない。
有希に出来る……と考えられる事ならば、彼女に出来ても不思議では有りません。
一塁に歩き出す瞬間、ネクストバッターズサークルに居る俺に対して視線をくれる朝倉さん。普段通りの黒目がち……蒼を思わせる虹彩に優しげな光を湛えられ――
微かに動かされるくちびる。彼女の出す吐息が口元を微かに白く染めた。
右手の指二本を額の前に翳し――変形した敬礼の形で朝倉さんに応える俺。
何はともあれ、ツーアウト満塁。得点差は三点。
おぜん立ては出来た。後は俺が打つか、打てないか。これだけ。
一塁側のベンチ及び応援団から期待……と言う色に染まった雰囲気を背中に感じながら、一歩一歩、強く踏みしめるようにバッターボックスへと進む俺。
いや、これは一種、神聖な儀式。大地を強く踏みしめる事により、地下深くに存在する悪しきモノを踏みつけ、邪気を祓い、正気を招き寄せる術式。
邪気を祓いながら数歩進み、左バッターボックスに入る一歩前、ふと立ち止まる俺。そしてそこから、ごく自然な雰囲気で三塁へと視線を送る。
其処には普段と同じはにかんだ様な……笑うしか答えを返す方法を知らな
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