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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第120話 決着
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 噛みついた相手に妙に冷静な対応で返されて一瞬、鼻白んだ表情を浮かべるハルヒ。しかし、それも一瞬。

「悪くはないわよ」

 桜は元が良いから、あんたが余程のヘマをしない限り、出来が悪くなる訳ないじゃないの。
 最初に褒めた振りをして、後で落とす。この手の人間のお約束の論法で対応をして来た。

 まぁ、これは予想通りの反応なので、問題はない。

「ありがとうございます」

 俺とハルヒの会話が終わった……と言うか、ハルヒの煽りが不発に終わった後の隙間を利用して、パイプ椅子から立ち上がった弓月さんが話し掛けて来る。
 おそらく、このハルヒと俺の会話の場所から逃げ出す事を第一の目的に。第二の目的は九回の裏の先頭打者としての準備を行う為に。
 どちらにしても、長々とこの場所で引きとめても良い相手ではない。

 そして、

 俺を少し見つめる弓月さん。それに続く意味不明の空白。その間、おそらく五秒ほど。
 その後、この世界に来てから彼女が初めて見せるある種類の笑み。慈母の如き、……と表現される微笑みを浮かべ、

「私は必ず出塁します」

 だから、この試合、勝ちましょうね。小さく、しかし、力強く首肯く弓月さん。その仕草、そして雰囲気は普段のたおやかな、と表現出来る彼女とは一線を画す雰囲気。
 言葉の後半部分は実際に口にした訳ではなく、そう、前向きに俺が受け取ったと言う事。彼女が完全に試合を諦めた訳ではない……のだと思う。

 しかし――

「あぁ、期待して待って居るよ」

 十二対十五。得点差は三点。逆転するには少し厳しい状態。更に、打順の巡りは非常に悪い。
 但し、俺には簡単に諦める訳には行かない理由と言う物が有る。

 僅かな時間、視線を絡み合わせる二人。その一瞬の後、右手をグーの形で突き出す俺。その拳に自らの拳を合わせる弓月さん。
 これは……。これはおそらく誓約の儀式。
 そして――



「頭の包帯、直してあげましょうか」

 そして始まった九回の裏。六組の最後の攻撃。
 ベンチの端近くのパイプ椅子に座る俺。右側、そして左側も寡黙な少女たちにより埋まって仕舞い、俺の真後ろから声を掛けて来る六組の委員長。

「それとも、弓月さんが戻って来てから直して貰いますか?」

 振り返った俺の答えを聞くよりも先に、かなり意地の悪い質問を続ける朝倉さん。もっとも、本当にその程度の認識で居るとするのならば、彼女もハルヒレベルだと言わざるを得ないのですが。
 そう考えながら俺の真後ろの席に座る彼女の表情を僅かな時間、見つめてみる。
 しかし――
 しかし、その時の彼女の表情は言葉の内容ほど、俺とその他の人間……SOS団関係者の女生徒たちとの関係を揶揄するような表情などではなく
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