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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第120話 決着
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を入れ直す為に、武神さんに結んで欲しいのです。
 吹きさらしの中にパイプ椅子を並べただけのベンチへと辿り着く前に、右手に持った赤いリボンを差し出して来る弓月さん。

 う〜む、成るほど。確かに断る、と言う選択肢はある。ついでに、その理由も。
 ただ、そうかと言って……。

「まぁ、他の女の子に頼まず、俺に頼みに来たと言う事は、少々不恰好でも構わないと言う事なんやろうな」

 彼女には見えない方の――右側の頬にのみ苦笑にも似た笑みを浮かべ、弓月さんから髪を纏める用のゴム。そして、リボンを受け取る俺。
 淡い微笑み。しかし何故か蠱惑に満ちた笑みとも取れる微笑みを俺に見せ――

 俺の目の前に無防備な背中と、とても綺麗な肌を晒す。その首から肩への微妙なラインが何とも……。
 普段は自然な形で長い髪を真っ直ぐ伸ばす彼女。……と言っても、本当に長いハルヒ、さつき、朝倉さんに朝比奈さんと比べると、首が隠れて、辛うじて背中に届くと言う程度ではSOS団所属の女生徒の中では実は短い方に分類される。
 その彼女が自ら髪を持ち上げて――

 一瞬、セクハラ親父のような思考が頭の片隅に浮かび掛け、それを無理矢理、ねじ伏せる俺。しかし、成るほどね。うなじ美人と言う言葉が有りますが、実際に目の前に現われて見ると、そう言う部分で異性を意識する事も有りますか。
 今回に関しては完全に思考が別の世界を彷徨い始めた訳ではない。しかし、少しだけ心ここに非ず、と言う雰囲気を発し始めたのは普段と同じ。

 その瞬間。

「何を鼻の下を伸ばしているのよ!」

 俺が何かしようとすると必ず、口を挟んで来る()()()()()さまが、このタイミングでも矢張りツッコミを入れて来た。
 もっとも、

「俺はそんなに器用やないから、鼻の下なんぞ伸ばせはせんぞ、ハルヒ」

 そもそも、一目見て鼻の下が伸びているのが分かるくらいに。……例えば、数センチ単位で伸びて居たら、その芸だけで一生食って行けるでしょうが。
 冗談にしてもイマイチ切れがない答えを返す俺。尚、その言葉の間もパイプ椅子に座り、俺に無防備な姿を晒している弓月さんの髪を纏め、斜め上から見つめる自らの視線と彼女の顎のラインを結ぶ点に綺麗な黒髪を纏める。
 高過ぎず、そうかと言って低過ぎない微妙な位置。

 そう、この形はポニーテール。まぁ、女性の髪形に詳しくない俺が再現出来るのはこの程度。
 最後に髪を纏めた箇所に柔らかくリボンを結び――

「ハルヒ。こんな感じに成るけど、どう思う?」

 俺から見るとバランスは悪くない。……とは思うのですが、それは所詮、俺から見た感じ。手近なトコロに居て、ある程度のバランス感覚を持った第三者に意見を求めるのは悪くない。
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