六十四話:赤龍神帝
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が染まる。苦痛で顔が歪む。全てがどうでもよくなる。
だが、ビズリーはそんなことなどお構いなしに悠然と歩いてルドガーの元に近寄って来る。
「さらばだ、息子と義理の娘よ」
「くそっ……黒歌…っ! お願いだから死なないでくれ…っ」
拳を振り上げるビズリーを前にして必死に動いて黒歌を守ろうとするが彼が動けるようになるにはまだ回復する時間が足りない。
ビズリーはそんな息子と義理の娘を様々な想いを込めた目で見つめてせめて最後は一緒に逝かせてやろうと思い、力を込めてその拳を容赦なく―――振り下ろす。
「すまない……遅れた」
だが、その拳は一人の男の双剣により受け止められた。
ビズリーは鎧の下で驚愕の表情を浮かべるが何もそれは武器を砕く自身の拳が受け止められたからではない。
その男が目の前に居るはずのない存在だからだ。
思わずビズリーは大声で叫んでしまう。
「なぜ……お前がここに居る!?」
「なぜだと? 分かりきったことを聞くな」
ルドガーはその男の背中を見た瞬間から絶体絶命の状況に置かれているにもかかわらずに思わず涙を流していた。
いつもその大きな背中に引かれて生きて来た。いつまでもその背中が憧れの存在だった。
彼が無限にある世界の中で最も安心できる居場所。
どうしようもなく安心感を覚えてしまうそんな背中に自分は何度も守られてきた。
もう、二度と会えないと思っていた。
もう、その暖かな声を聞くことは出来ないと思っていた。
だが……彼は今、自分の目の前であの頃のように自分を守ってくれている。
「俺が弟の……ルドガー・ウィル・クルスニクの―――兄貴だからだ!」
ユリウス・ウィル・クルスニクは、今再び何よりも大切な者を守る為に剣を握る。
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