六十四話:赤龍神帝
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を瞑って独り言のように呟きながら自身の懐に手を入れる。
「―――保険に頼るはめになるとはな」
青い目を見開いたビズリーは懐からもう一つの―――『黄金の懐中時計』を取り出し構えた。
それは、分史世界の自身の時計。ヴィクトルが自分の時計の代わりに使っていた時計だ。
彼はもしもの時の保険として時計をヴィクトルから奪っていたのである。
炎に包まれビズリーの姿が再び骸殻へと変わる。
「うそ……でしょ?」
「まさかあいつの時計を…っ!」
ルドガー達の顔が恐怖で凍り付く。
もう、イッセーは戦えない。他の者の力ではビズリーには傷一つつけられない。
どうあがいても―――絶望だった。
「させないわ!」
そこに、まだ覇龍状態から戻っていなかったヴァーリがビズリーを止めるために襲い掛かって来る。
その巨体と威圧感は常人であれば目にするだけで震えて動くことが出来ないだろう。
しかし、ビズリーは常人などではない。静かに姿勢を低くして『絶拳』の構えを見せる。
だが、それは『絶拳』ではない。彼が新しく編み出した技。
「少々、甘く見過ぎていたようだ。だが、これで―――全て無に帰る」
ビズリーの体から凄まじいエネルギーが放たれ、炎と化す。
さらには拳からは黒い雷が噴き出て来て禍々しさを増す。
その場にいる全ての者の目をくぎ付けにした男の拳が今―――振るわれる。
―――死。
ルドガーの頭によぎったのはその一文字だけだった。
だが、彼の思考は愛しい声によって遮られる。
「ルドガー!」
「やめろっ!?」
艶やかな黒がビズリーの最も近くに居たルドガーを庇うように飛び出す。
必死に叫び声を上げるルドガーだったが既に手遅れだった。その一瞬後に―――
「トカゲ如きが図に乗るな! ―――剛…絶拳っ! ぬおりゃぁぁあああっ!!」
ビズリーの拳は天を舞う白き龍をいとも簡単に撃ち落とした。
空に放たれたにも関わらず拳から漆黒の波動が発されヴァーリの体を貫き悲鳴と共にその姿を強制的に人間の者へと変えさせる。
そして、余波は近くに居たルドガー達を容赦なく巻き込み真っ赤な血をまき散らし、致命傷クラスのダメージを平然と与えて大きく吹き飛ばしてしまう。
痛々しいまでに地面を転がりながら飛んでいき、やっと止まったルドガーだったが全身が痛みまともに動くことが出来ない。
だが何よりも痛むのは心だった。
彼の目の前には愛しい女性―――黒歌が今にも息絶えてしまいそうな荒い息をしながら血だらけで倒れているのだ。
黒歌は咄嗟に最愛の人を守る為に攻撃を直撃から逸らしたのである……自身が身代わりになることで。
絶望でルドガーの目
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