case.3 「歩道橋の女」
Y 同日pm7:43
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こんなところへ…!?」
その自動車から顔を出したのは、ここにいるはずのない天宮氏だった。
「一昨日に宮下さんから連絡をもらってな、気になって来てみたんだが…。予想以上に酷い有り様だな…。」
そう言って天宮氏は、車から下りて俺の前へと歩み寄った。その手には何かを持っているようだが…。
「藤崎君、私も一緒に行くぞ。」
「何を言ってるんですか!天宮さん、あなたは…」
「いいや!君が何と言おうと行くと決めて来たのだ!今回の件は私にも責があるのだし、これは佐藤神父の弔いでもあるのだからな!」
どうやら俺の言葉は聞き入れてもらえそうにない…。俺は仕方ないと言った風に溜め息を吐いたのだった。
心配そうにする俺に、天宮氏は言葉を付け足した。
「そんなに心配するな。自分の身は自分で守れる。それに、この二つも持ってきたからな。」
そう言って天宮氏は、手にしていた二つを俺の前へと出した。
最初は暗くて何だか分からなかったが、一つはヴァイオリン・ケースだった。
「天宮さん…、ヴァイオリンなんて遣られてたんですか?」
「藤崎君、私だって物好きでスポンサーになったわけじゃないよ?これでも音大を出てるからね。」
初耳だった。以前にも話したが、天宮氏はこちらから尋ねない限り、あまり自分のことは語らない人だ。初耳でも仕方ないと言えるが…。
「天宮さん、そう言うことは早く言って下さいよ…。」
「いや、すまんな。こんなことでもないと演奏せんからな。」
この方は全く…。そしてもう一方のものはというと…。
「あ、それって…!」
それは以前、廃病院事件の時に俺に貸してくれたランプだった。
天宮氏はそのランプを灯し俺に言った。
「少なからず戦力にはなるだろと思ってな。で、君達は五十四番をやるのだろ?第二ヴァイオリンは私がやる。」
どうやらこの曲を知っているようだが…ほんと、怖いもの知らずな方だな。
「天宮さん、それではご協力お願いします。」
「任せておけ。」
俺は天宮氏との話を終えて振り返ると、後ろの四人は力強い味方を得たと言う風に、その首を縦に振ったのだった。
目指す目的地は…もうすぐそこだ…。
その歩道橋は、まるで闇が掛けられたように真っ暗になっていた。普段なら多くの街灯で照らし出されているはずが、歩道橋を中心に半径200mほどの区域が停電しているのだ。
「霊障…か。」
各自で持ってきた明かりを頼りに、俺達は歩道橋から30mほど離れた場所で準備を始めた。
みんなが所持している明かりはランプだったが、そこにはラテン語で聖句が書き込んであった。俺がそうするよう指示したからだ。
みんなは演奏出来る体制を整えると、静かに俺の指示を待っていた。
「さて…どうするか…。」
俺はそう呟くと、天宮氏に歩
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