case.3 「歩道橋の女」
X 9.12.am8:28
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ながら、それらを話してくれた。しかし、妙に引っ掛かる…。
「先生、これを見て下さい!」
田邊はいろいろと調べていたようで、新たな画面を俺に見せた。それはこの辺りの地図で、今松山さんが言った場所に印がしてある。正しく正五角形の位置にそれらはあったのだった。
「ま…まさか…!」
俺があることに気付き松山さんへと振り返ると、松山さんはニッと笑って言った。
「あぁ、そのまさかだよ。実はな…。」
そう言うことだったのか…。だったら、あの影は…。
「田邊君。大至急この街の楽団員を召集してくれ。恐らく、隣街にまだ宮下教授が居られるはずだ。教授にもご足労願ってくれ。場所は篠原音楽堂だ。」
「はい?今からですか!?」
「そうだ!ぐずぐずしている暇はない。何せ数百年の時を経て、古い記憶が解かれちまったんだからな…。」
「記憶って…?」
田邊は不思議そうに首を傾げた。ま、無理もない。
この街の配置は、多少なりとも伝承をしらなければピンッとこないのだからな…。
「行脚姫…。その昔、飢饉や伝染病の流行った時代の話だ。一人の姫君が供を連れ、各地の寺社へと願掛けに赴いた。一刻も早く、この災厄を去らせてほしいと。だがその途中、供に裏切られて殺されてしまう。供は姫君の衣まで剥ぎ取り、骸を晒したまま消えたという…。」
「それは…昔話ですか?」
田邊は、何とも言い難いと言った風に顔をしかめた。
「そうだな。だが、もう一つ伝えられていることがある。供は若い男で、姫君はそいつのことを好いていたと言われてるんだよ…。」
「まさか…!?」
どうやら、田邊も関連性に気付いてくれたようだ。
この行脚姫の話は、この街で実際に起きたことなのだ。そして、退かしたという小さな祠があった場所が…姫君の殺さた場所なのだ。
どうやらこの街の建造物は、封印結界の役割を果たしていたようだが、時代の流れに呑まれて変えざるを得ない状況になったのだろ。
そんなとき、田子倉さんの事件が起きてしまった…。
「そんなことはどうでもいいだろうが!藤崎君、君だけが頼りなんだからな!」
松山さんは切迫した顔で俺に言った。最早、警察の手には終えないと言うことなのだろう。
「田邊君、メモしてくれ。上から時計回りに第21番、第199番、復活祭、第35番、そして第82番だ。」
「先生、僕はどこへ?」
「君は四番目でオルガンを担当してくれ。以前に頼んだことのある曲目だし、指揮も兼任してほしい。」
俺は田邊にそういうと、立て続けに指示を出した。
俺が全ての指示を出した終えた後、俺達は素早く支度を整えてその旅館を後にしたのだった。
吉と出るか凶と出るか…。これが万が一失敗すれば、恐らく俺の命はないだろう…。
そう、あの佐藤神父のように…。
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