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藤崎京之介怪異譚
case.3 「歩道橋の女」
W 同日 pm4:57
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 俺達があの影について話していると、ゼイゼイいいながら松山さんが言ってきた。
「き、君達…何言ってんのか…全く解らん…!」
 そう言うと、松山さんは限界とばかりに座り込んでしまったのだった。ま、仕方ないか。
「悪いですね。ここまで酷い状態だとは、正直考えてなかったんですよ。」
 松山さんは、もう何がなんだか解らないといった顔をしている。
「君達ねぇ…。分かった、一から順に説明してくれ。あんなもん見た後だ、もう君達を疑ったりしないから。」
 俺は溜め息を吐き、仕方なく一から説明を始めたのだった。
「まず、最初は田子倉さんの願いがあの場所に強く残ったんだと思います。恐らく、愛した男性と共に旅立つということが…。」
 そうして説明し始めると以前とは打って代わり、松山さんは真剣な顔をして聞いていた。
 しかし、いくら霊を見たとはいえ、空間記録を理解するには些か経験不足と言えるだろう…。普段見えない人に霊のことを説明するのは、かなり厄介なことに代わりないからな…。
 あらかた説明し終えると、僕は松山さんに言った。
「理解出来ましたか?」
 俺の目の前には、何がなんだか理解不能といった感じで、松山さんがげんなりとしていた。仕方がない話ではあるんだけどさ…。

 空には星が瞬き、蒼白い月が悠然と輝いている。かなり時間も経ったようで、周囲の空気も冷え始めていた。
「先生、温かい飲み物買ってきました。」
 突然、背後から田邊の声がした。振り向くと、そこにはコンビニ袋を持った田邊が立っていた。
 そう言えばこいつ、途中から姿が見えなかったような…。
「すみません。僕、トイレに行きたくなって、コンビニへ行ってたんです。でも話が長くなるようだったので、中で買い物してました。」
 こいつは…。全く、後で何かしてやろうか…。
 まぁ、それはさておき…その後は田邊の買ってきた飲み物で体を温め、次にどう動くかを話し合った。
 まず、明日には楽団員達の半数は到着するため、すぐ練習に入って一週間は演奏に掛かりきりになる。
 そうなると、こちらに割ける力はそう多く出来ないんだが・・・。

「それじゃ十六日の朝、もう一度旅館の方へ行くから、その夜にでも決着つけるってのでどうだ?」
 珍しく松山さんから提案してきた。
「しかし…、それでは少し遅いのでは?」
 松山さんには悪いが、こういうのは急ぐに限る。しかし、松山さんは溜め息を吐いてこう言ったのだった。
「こっちだって別件抱えてんだ。それに、勝手に行動されて捕まりでもされると厄介だからな。お前なぁ、ちったぁ休みくらい取れっての!」
 言い方は乱暴だったが、どうやら気遣ってくれているみたいだ。
 俺は多少苦笑いしながらその言葉に甘えることにし、この件を十六日まで先伸ばしすることにした。
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