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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
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なりそうなのでやめた。

「…………むぅ、難しいもんだなー」

手中の鉄塊を持ち上げ、引き金に指をかけた。同時に視界に心音と同期するバレット・サークルが浮かび上がり、それが最小になるのを見計らいトリガーを引く。

銃声。そして着弾。

だがそれも、表示されたバレット・サークルとは違う明後日の方向だ。もう呪われているとしか思えない。

パラパラと舞い上がる石片を不機嫌げな表情で数秒眺めていた少年は。

あ、と。

唐突に声を出した。

あるじゃないか。

わざわざ狙わずとも、引き金を引くだけで当てられ、かつ面倒なことにならずにほぼ一撃必殺をできる方法が。










ところで、天峨と呼ばれる女性が一つ下の階に逃れたというのは、実は少し違う。

実際には、いくら撃ってもかすり傷すら負わずに、圧倒的な速度をもって全弾回避、弾幕回避をやってのける少年という図に完全に気圧され、圧倒されて後ずさりしたところ、屋上を囲う柵にすくい上げられる形で蹴落とされ、とっさに伸ばした手が引っかかったのが一階下のガラスの嵌まっていない窓枠だったというだけだ。

数秒間呆けたようにその場にへたり込んでいたが、そこは仮にもBoBに挑む猛者。すぐさま反転し、今自分が入って来た窓枠にヴィントレスの銃口を向けた。

だが、心のどこか――――《天峨》ではなく現実の自分が極めて冷静な声を発する。

たとえ入って来たとして、弾丸を当てられることができるのか、と。

それは、無視しておきたい、なあなあで、誤魔化し誤魔化しで、目を逸らしたい疑問。

単純に、じゃんけんの勝ち負けのような絶対性。そこに理屈も、屁理屈も通じない。

それは、ルールだから。

グーはパーに。パーはチョキに。チョキはグーに。

議論も、討論も必要ない。そこに理屈を挟むことなどできないのだから。

―――でも、それでも。

女は決して、諦めるという選択肢を選ばない。勝つためだけの策を、銃口を向ける窓から片時も手放さない意識の端で模索する。

だが、いくら考えても。

やはり勝機は一つしかない。

対戦相手である《レンホウ》という名のあの少年の集弾率の悪さは異常だった。器用度(DEX)が初期値であっても、あそこまでの接近戦でかすりもしないというのはもう奇跡を通り越してわざとやっているのではないかと疑うレベルだ。しかし、彼の表情から察するにそのようなこともなさそうだった。途中で《眩暈》ステータスでもどこからか仕入れたのだろうか。

だが密林ならともかく、廃都(ここ)でそんなバッド地形効果などなかったような、と。

つらつらとそこまで考えた直後。

背後のドアが勢いよく蹴っ飛ばされるように開いた。


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