第十夜「祈りの対価」
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を、海が呑み込んだのだ。 それを間近で見ていた者は恐れおののき、またその大いなる奇跡を町へと広めた。
「いきなり海が割れて、そこへ皆呑まれちまったんだよ!奇跡を見たんだ!」
‡ ‡ ‡
翌日、礼拝堂の火が消えたとき、レオニー神父はアレンを探した。しかし、骨どころか、その場にアレンがいた痕跡すら見つけられなかった。
アレンの性格はよく知っている。こんな時に隠れてるなんて出来っこない…。
―アレンッ!一体何処へ行ってしまったんだっ!―
そんな時、ジャックとおかみさんが駆け付けてきた。幸い、彼の家は無事であった。だから、教会の様子を見に来れたのだ。
「ねぇ…神父さん…何してんだ…?」
ジャックは焼け落ちた礼拝堂で必死に何かを探してるレオニー神父を見たのだ。
周囲に集まる者らも、皆一様に俯いたまま、その問いに答えてくれる者はいなかった…。
だが、ジャックは気付いていた…。アレンの…親友の姿がないことに。
しかし、それはとても認めることの出来ない現実であった。礼拝堂跡の神父のもとに駆けて行き、ジャックは自分の考えが間違っていることを確かめようとした。
「レオニー神父!アレンはどこ行っちまったんだよ!まさかここじゃねぇだろっ?」
不安を掻き消すが如く、ジャックは叫んだ。
レオニー神父はただ項垂れていたが、たった一言だけジャックへと言った。
「アレンは…神の園へ行ったんです…」
それを聞いたジャックは、最初理解出来ずにいた。だが…直ぐにその場に崩れ落ちて泣いた。そんな泣きじゃくるジャックを、母親が強く抱きしめた…。
「ジャック…アレンくんはね、もう悲しくないとこへ行ったんだよ。あれだけ祈ったんだ。神様は彼をお呼びになったんだよ…。」
そう言って、ジャックを抱きしめたまま泣いていた…。
‡ ‡ ‡
「ここは…どこだろう?」
眠りから目覚めた彼は、見知らぬ場所にいた。
―あぁ…あったかいやぁ…―
春を思わせるような光。遠くで鳥の囀る声がする。
―僕は…確か礼拝堂で祈りを…―
何かよく思い出せなかった。ただ、安らいだ気持ちに満たされていた。
「アレン、よく頑張ったね。」
暫くすると、不意に後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
彼はハッと振り返った。
「父さんっ!母さんっ!」
そこには…五歳のアレンを残し去ってしまった両親がいた。
「もうっ!どこ行ってたんだよ!ずっと待ってたんだよ!!」
アレンは涙を浮かべ、両親に言った。
「ごめんね…。もう、どこにも行かないから…。」
彼の母は、我が子を強く抱きしめた。
―あったかい…―
アレンはその喜びに、胸がいっぱいになっていた。もう、ここがど
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