第十夜「祈りの対価」
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中で神に問った。
「僕は、もう少ししたら戻ります。心配なさらず先にお休みになられて下さい。僕は大丈夫ですので。」
アレンは微笑して、レオニー神父に言った。
レオニー神父はそんなアレンを見て仕方なさげに、「分かりました。でも、早く戻って休むのですよ?」と、念を押した。
「はい、分かりました。」
アレンは笑みを見せ、そうレオニー神父に返答した。
「では、お休みなさい。」
「お休みなさい、神父様。」
レオニー神父はそのまま静かに礼拝堂を後にしたのだった。
‡ ‡ ‡
その日、このブレスの町をリューベンの戦艦が取り囲んだ。それは真夜中を過ぎた頃、この曇天に乗じての奇襲であった。
リューベンはバスタムと組んでいたのだ。そして、最も防御の薄いこの最西の町を陥落し、東から攻めるバスタムととで帝都を挟み撃ちにする手筈になっていた。
バスタムがこのリューベンを味方に付けようと考えたのには訳があった。リューベンの大砲の技術がほしかったのだ。その飛距離と破壊力は、世界一とさえ目されている。このブレス襲撃は、その力を見せ付ける絶好の機会でもあった。
「撃てっ!」
―ドーンッ!―
砲撃が開始された。
―ドーンッ!ドーンッ!!―
次々に撃ち出される大砲の弾丸に、町はパニックに陥っていた…。
―ドーンッ!ドーンッ!!―
逃げ惑う人々、燃え盛る町並み…。
―ドーンッ!―
そのうちの一発が、ありえない飛距離を飛んで、山間の教会に落ちた。
―ドガンッ!バァーンッ!!―
轟くようなその音に、宿舎で眠って居たものは全員外へ出て、音のした方…礼拝堂へと向かった。
彼らがそこで見たのは…屋根が崩れ、中からは炎が上がっている礼拝堂であった…。
そこへ「レオニー神父っ!アレンが!アレンがいませんっ!!」と言う声が上がり、レオニー神父は真っ青になった。
「まさかっ…まだ礼拝堂に…!」
しかし、もう手の施し様もなく、礼拝堂は地獄の業火のように燃え盛っている…。とても入ることなどできる状態ではない…。
「アレン…アレーンッ!」
だが…そんな炎の中へとレオニー神父は飛び込もうとしたため、周囲の者達は必死で押さえ込んだ。
「これではもう手遅れです!この上、神父様にもしものことがあれば、どうすれば良いと言われますか!」
それでもレオニー神父は、燃え盛る礼拝堂に向かってアレンの名を呼び続けていた…。
―なぜだ!神よっ!あの哀れな子を、どうしてこうも…!―
礼拝堂の屋根が再度崩れ落ちた時、レオニー神父も地面に崩れ落ち、彼は泣いた。
それしか出来なかった…。
しかし、同時刻に奇跡が起こった。
海上で大砲を撃ち続けていたリューベンの艦隊
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