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幻影想夜
第十夜「祈りの対価」
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せろよ、おふくろっ!」
 ジャックにそう言われ、おかみさんはアレンを解放して言った。
「そうだったねぇ。さぁ、こっちへどうぞ。」
 そう言うや、直ぐ様アレンを食卓へと招いた。
 そこにはささやかな食事が用意されており、手作りらしきパウンドケーキまであった。
「あ〜っ!ジャックッ!今日ってきみの誕生日だったじゃないか!すっかり忘れてたよ…。ひどいなぁ、言ってくれればプレゼントを用意できたのに…!」
 アレンはジャックに詰め寄った。親友の誕生日を忘れてた自分が悔しくもあったのだ。しかし、おかみさんは笑ってこう言った。
「いいんだよっ!この子だって、一緒に祝ってほしかっただけなんだ。居てくれるだけで充分なプレゼントだよ!ねぇ、ジャック?」
「ああ、そうだぜ?だから来てくれって言ったんだ。それに…これっ!」
 ポケットから菓子の袋を取り出して、はにかんだ。
「もうプレゼント、貰ってるしよ?」
 そう言って、また白い歯を見せて笑った。が、それを見たおかみさんは目を丸くした。
「ジャックっ!いつそんな高価なもん貰ったんだい!まぁ〜ったく、なんも言わないでこの子は…!」
 軽くジャックの頭を小突いた。そして、アレンに向かって礼を言った。
「お礼なんてっ!信者さんからの頂きものを分けただけですからっ!」
 そう言うアレンに、おかみさんはまた抱きついた。「ほんと、良い子だよっ!」

 その日の食事前、ジャックはアレンへと頼み事をした。
「アレン、お祈りしてくれよ。今日は特別だからさ…。」
 おかみさんも、そんなジャックを見て「お願いできるかい?」と温かな笑みを見せた。
「分かりました。拙い祈りですが、ジャックのために…。」
 アレンは手を胸の前で合わせた。二人もそれに倣い、手を合わせた。
「天にまします我らの父よ。我らに糧を与えたまえ…。」
 その日のささやかな誕生日は、ジャックにとって最良の一日となった。


  ‡  ‡  ‡


 ジャックの誕生日から数週間が過ぎた。
 アレンはいつも通り、礼拝堂で就寝前の祈りを捧げていた。

―人々が苦しむことのないように。これ以上戦いで人が傷つくことのないように。僕のように捨てられる子供がいないように…―

 外は雨が降っていた。シトシトと雨音が、礼拝堂の中に響いている。
「アレン、まだ眠らないのですか?もう真夜中になります。明日も早いのですから、もう休みなさい…。」
 レオニー神父がそう言って、礼拝堂に入ってきた。
「レオニー神父…。なぜか寝付けなくて、ずっと祈りを捧げていました。今この時にも、戦争は続いています…それを思うと…」
 レオニー神父は表情を曇らせた…。この子の魂の傷は、いつになったら癒えるのだろうか?
 レオニー神父は祭壇へ目を向けて、胸
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