第九夜「クロマティック・ファンタジー」
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者が洋館に着いて呼び鈴を鳴らしても、全く返事が無い…。いつもなら外人の女中が愛想よく出てくるのだが…。
ふと見れば、玄関のガス灯が灯った儘になっており、出掛けている…と言う風でもない。
皆は不審に思い、そのまま裏庭へと回り込んだ。そして、誰かいないかと口々に呼んでみたが、全く返答がない。
「こりゃ、どういうことだ?」
あまりの不自然さに、一人が仕方無く窓硝子を割ってカギを開け、中に入った。他の者もそれに続いて入ったが、屋敷の中には妙な臭気が漂っていた。
「なんじゃ?この匂いは…。」
一同は顔を見合わせて、廊下を歩いた。そして、客室の扉が開いていることに気付き、そこから中を覗いてみると…。
「なんちゅうことだっ!!」
そこには、この館の主人が、もう固まってしまったどす黒い血の中で息絶えていた。そこには蝿も集っており、入った時から漂っていた匂いは…この主人の死臭であったのだ。
「じゃあ、娘はどこじゃっ!あの嬢ちゃんはどうなったんじゃっ!」
数人がバルコニーのある二階へ上がり、娘を探した。数分もしないうちに、娘の所在は明らかとなった。
「ああぁ…っ!何と酷い…!」
その場に居たものは、全て顔を背けた。
娘は自らの寝室で息絶えていた。胸を切り裂かれ、顔には無数の殴られた後があり、醜く歪んでしまっていた。どうやら犯された後に、刺し殺されたらしい…。
その娘の手は、少し離れところに置いてあった竪琴を取るかのように、だらりと伸びていたという。その竪琴にも相当の血が飛んでおり、どす黒く染まっていた…。
† † †
「またあの空き家かっ!?」
忌々しいっ!土屋警部は顔を歪めていた。
―何がオカルトだっ!この科学の時代に、馬鹿馬鹿しいにも程があるっ!―
そう思い立って、警部は三人の部下を連れて風化した館を訪れた。
「奴はこの空き家のどこかに隠れてるに違いないっ!どうせどこかでこの騒ぎを楽しんでるんだろうよ。早々に見つけだし、留置場へぶち込んでやるっ!」
土屋警部はそう意気込んでいるが、無理矢理連れてこられた三人の部下は青ざめて言った。
「警部殿、この洋館に入るのは少し…」
部下たちはそう難を示した。
「何を言っているのだ!司法に使える者が、そんなに腰が引けてどうする!いいから付いてこいっ!」
部下の弱気を叱咤し、土屋警部は洋館の中に足を踏み入れた。
しかしながら、あまりにも風化が激しく、隠れられそうな場所は殆ど見当たらない。そんな中で探してはみるものの、人っこ一人いやしない。
「奴め、どこへ隠れやがった!」
苛立つ土屋警部は、階段を見つけて「今度は二階だっ!」と部下を促し、崩れかけている階段を注意深く登って行った。
だが二階の廊下を数歩歩いた時…
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