魔法覚醒
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デイドラはルームの中を縦横無尽に駆けずり回っていた。
包囲されないように、背後を取られないように動き続けていた。
その状況に陥ることは死を意味するということに本能的に気付いていたのだ。
そのため、狙いを絞り切る前に、闇雲に攻撃することしか叶わず、刃は関節や複眼などの弱点を捉えることができず、ほとんどが鋼のように硬い外骨格に阻まれている。
だが、それでもデイドラはただひたすらに、一撃離脱を繰り返している。
それを可能にしているのは、偏に、デイドラの補正がかかった機敏さがキラーアントのそれを上回っていることや、ルームが縦横十Mあるおかげで、キラーアントを撹乱できているからだった。
しかし、残り時間は無限ではない。
(このままでは、俺の体力が尽きる)
デイドラは淡々と一撃離脱を繰り返しながら、模索する。
互いに決定打となる攻撃を出せずに、膠着状態にあったが、それは撹乱できている今だけの話。
(状況を打開するには――)
狙いを絞りきれないのは、体勢が不安定な状態で攻撃に移行しているから。
(ならば、もっと無駄を削る必要がある)
軌道を変え、もっとも近くにいるキラーアントに猛然と突進する。
それに応じて、キラーアントが爪を振り上げ、一拍の間の後、真っすぐに振り下ろした。
先程までなら、横に跳んで交わしていた攻撃だったが、デイドラはその爪を目で追い、寸前のところで、身体を捻り、紙一重でそれをかわす。
それと同時に身を屈めて、前方に跳躍してキラーアントの懐に飛び込み、胸部と腹部の継ぎ目刃を走らせた。
が、軌道が逸れて、胸部の甲殻に刃が甲高い金属音とともに弾かれた。
(もっと神経を研ぎ澄ませろ)
弾かれたことを知覚するが早いか、キラーアントの攻撃範囲から離脱する。
その間に、視線を巡らせて他のキラーアントの位置を把握し、次なる攻撃目標を定めると、転身して直線的ではなく、曲線的に肉薄した。
何度もキラーアントの間合に入ったことで、攻撃の範囲、パターン、そして速度が染み付くように体で把握したデイドラは紙一重でキラーアントの攻撃を避け、距離を詰めた。
(もっと踏み込め)
そして、懐に深く踏み込む。
短刀を握る手に感覚を集めて、最高になったとき、先ほどと同じ部位に横薙ぎの惨撃を放った。
切っ先は吸い込まれるように狙い定めた箇所を捉えた。
――が、
(殺ったか)
と思うもつかの間、
「なっ………………」
渾身の一撃が弾かれ――刀身が砕けた。
その原因は、刃毀れを顧みない戦闘が続いたにも拘わらず、デイドラは短刀をメンテナンスしなかったためで、キラーアントを考え無しに何度も切り付けたことが、
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