巻ノ四 海野六郎その七
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「あの御仁も悪くはない、では」
「あの坊主もですか」
「誘ってみよう」
「そうされますか、実はそれがしも殿にあの者のことをお話しようと思っていましたが」
「では丁渡よいな」
「ですな、さすれば大会の後で」
海野も応える、そしてだった。
幸村主従も試合を勝ち進んでいった、海野はその中でも言うだけの強さを見せてそうしてだった。残り八人までになった。
その八人の中でだ、まずは三好清海が勝ち抜き幸村、穴山、そして由利もだった。最後の海野の相手はというと。
これまた異様に大きな男だった、三好清海と同じだけ大きい。
しかも筋骨隆々としている、その見上げんばかりの男の身体とはいささか不釣り合いの整った細面を見上げてだった。
海野は男にだ、こう問うた。
「御主強いのう」
「わかるか」
「うむ、多くの修羅場も潜り抜けておるな」
「ははは、これでも武芸者じゃからな」
「そうじゃな、力も技も相当じゃな」
「その力で今から御主を倒す」
男は海野に低い声で告げた。
「覚悟はよいな」
「いや、覚悟はせぬ」
海野は土俵の中で向かい合っている男に答えた。
「勝つのはわしじゃからな」
「言うのう」
「してじゃ。御主の名は何という」
「わしの名か。今は牛鬼と名乗っておる」
「牛鬼。また物騒な名前じゃな」
「強いからじゃ、わしが」
それ故にというのだ。
「この名にした」
「妖怪の中でもとびきりにタチが悪いのにか」
「そうじゃ、しかしわしは牛鬼の様に強いが」
しかしというのだ。
「あそこまでしつこくはないぞ」
「牛鬼はしつこいというのう」
「そうではない、ではな」
「うむ、今から御主を投げてやろうぞ」
「それはこちらの台詞じゃ」
こうしたやり取りをしてだ、そうして。
二人ははっけよいからだ、ぶつかり合った。そのまま。
四つに組み合った、体格は海野の方が遥かに劣るが。
それでも彼は牛鬼のその大柄な身体からの押しに向かい合った、それを見てだった。
勝負を見ている由利は唸ってだ、こう言った。
「六郎め、言うだけはあるわ」
「強いな」
穴山も応える。
「相撲が」
「殿もお強いが」
「あの坊主もな」
三好清海もというのだ。
「強いな」
「そうじゃな、しかしな」
「六郎と今闘っておるあの男もな」
「あの男、尋常ではないぞ」
その強さはというのだ。
「六郎とがっぷり四つに向かい合っておるわ」
「いや、むしろな」
「六郎の方がか」
「そうじゃ、あれだけの男と渡り合っておる」
「そうも言えるか」
「そう思うがな、この勝負わからぬ」
どちらが上か、そのことがというのだ。
「勝つのは六郎か、それとも」
「あの牛鬼とかいう者かじゃな」
二人でこうしたこと
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