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義愛
7部分:第七章
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ういうことです」
 またにこりと笑ってきた。
「どうでしょうか」
「僕はあの頃の日本は知らないですけれどね」
 私はまずこう前置きした。
「けれどこのお店は」
「はい、このお店は」
「好きになりました。そしてお爺さんも」
「有り難うございます」
「それにこの話は忘れられません」
 この店とお年寄り、そしてコーヒー以上に。私の心に残った。
「何があってもね」
「そうした日本人がいたことに」
「はい」
 その言葉に頷く。
「そしてその人がしたことを忘れていない私達がいることを」
「忘れはしません、何があっても」
「ではまたこれからも」
「来て宜しいでしょうか」
「ええ、どうぞ」
 それが別れの言葉だった。それも一時の。
 遠く南にある筈のこの島に日本人の足跡があった。それを今でも覚えていてくれて、讃えてくれる人がいる。私はそのことを何時までも覚えていようと思った。何時までも、何時までも。



義愛   完


                  2006・9・25



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