7部分:第七章
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後ですよ」
「ああ、第二次世界大戦ですね」
「あの後ね、国民党が来まして」
「ああ、それですか」
そう言われて話がわかってきた。こくこくと頷く。
「日本のものは全て禁止で。私もやっと覚えた日本語を表では話せなくなりました」
国民党の政策は徹底していた。日本文化を全否定したのである。蒋介石は己の権力を固める為にそれをした。またかなりの独裁政治を敷いたことも私は知っている。
「それであの像も」
「壊されそうになったのですか」
「そんなの我慢できるものではありませんよ」
お年寄りは笑みを浮かべていたがその声には芯があった。
「私等の為に命まで捨ててくれた駐在さんの像を壊されるなんて。それで」
「それで。どうされたんですか?」
私は問うた。コーヒーを口から離して。
「中国の服を着せたんですよ」
お年寄りはニコリと笑ってそう答えた。
「中国の服をですか」
「ええ、それだと向こうにもわかりませんでしたね」
「そうでしょうね」
これは私にもよくわかった。
「あれで中国の服だとそのまま関帝廟ですからね」
「ええ、そう思った国民党の人間もいましたよ」
「やっぱり」
「ですがね」
ここでお年寄りはうっすらとした笑みになった。
「私等にとってはあの方は関羽様よりもまだ尊い方なんですよ」
「そうなんですか」
「そうですよ。だってあの人は日本人だったんですよ」
「ええ」
「それなのにね。台湾人の私達の為に尽くして下さって」
「同じ日本人だと言ってですよね」
「やっぱり素晴らしいですよ。普通は出来ません」
こうも言った。
「民族が違うのにね。同じだなんて」
「そうですね。僕にも何か信じられない話です」
「しかし本当なんですよ」
「ですよね」
そう言われてもやはり実感が湧かない。まるで夢みたいに思えて仕方がない。
「不思議ですよね」
「はい。本当に不思議なまでに素晴らしい方でしたよ」
それからお年寄りは言った。
「私のお爺ちゃんも助けてくれましたし」
「お爺ちゃんとは!?」
「わかりませんか?ほら」
私の顔を見て言う。温かく、穏やかな笑みになって。
「あの海の中で怪我をした男の子」
「ああ、あの人が」
言われてようやく気付く。
「そうなんですよ、あれは私の祖父なんですよ」
「そうだったんですか」
「私はね、お爺ちゃんに日本語を教えてもらったんですよ」
「あの人に」
「店も残してもらってね。森川さんに助けてもらってから頑張って日本人が持っているみたいな格好いい喫茶店作ってそのマスターになるんだって頑張って」
「はあ」
「父が二代目で、私が三代目です」
「三代ですか」
「ええ、こっそりと日本の雰囲気というのを残してきましたよ」
「それがこのお店」
「そ
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