7部分:第七章
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森川はまた言う。
「宜しいですね、それで」
「わかりました」
保正はそれに応える。
「有り難うございます、では早速」
「村民達にお伝え下さい」
森川は最後に述べた。
「私がお教えしたことを忘れないようにと」
「は、はい」
「私が願うのはそれだけです。それでは」
森川はすうっと姿を消した。その顔は最後まで笑っていた。笑って姿を消した森川の後には。青い空が広がっているだけであった。
保正は目が覚めるとすぐにそのことを村民達に伝えた。皆が森川が言った通りに周りを奇麗にするとそれで病はなくなった。全ては森川の言った通りであった。
「また駐在さんに助けられたな」
「ああ」
村民達は病が鎮まった後で互いに顔を見合わせてそう言い合った。
「死んでからもわし等を見守って下さっていたのじゃな」
「本当に有り難い方じゃ」
「それでな」
保正はここで村民達に対して言った。
「わしは駐在さんを神様として祭ろうと思うのじゃ」
「駐在さんをか」
「そうじゃ、生きておられる時はわし等の為に尽くされ」
さらに言う。
「死んでからもわし等を見守って下さっている。神様に相応しくはないか」
「そうじゃな」
「確かに」
村民達もそれを聞いて頷き合う。
「ではそれでよいな」
「うむ」
「是非そうするべきじゃ」
皆保正の言葉に頷く。
「それがあの方へのご恩になるな」
「わし等の為に死んでからも尽くして下さるあの方への」
「駐在さん、見てますか」
保正は森川がいた駐在所を見て言った。
「わし等、ずっと駐在さんを覚えておきます。貴方のこと、忘れません」
こうして森川は神として祭られることとなったのである。呼び名は義愛公。義に篤く、常に仁の心を忘れなかった森川を讃えての呼び名であった。人々の為に尽くした森川はこうして神となり異国で祭られているのである。長い長い時代が過ぎても。今こうして祭られているのである。
「そうした事情があったのですか」
私はお年寄りのコーヒーを飲みながら話を聞いていた。話を聞き終えて何か夢の様な気持ちになった。
「台湾にそこまで尽くした日本人がいたなんて」
「意外でしたか?」
お年寄りは私の方を見てにこりと笑って尋ねてきた。
「御先祖にその様な方がおられたことを」
「ここでの日本人のことは少しは聞いているつもりでしたが」
「はい」
「それでも。そこまで素晴らしい方がおられたとは」
「これは本当の話なのですよ」
お年寄りは優しい笑みを浮かべてまた言った。
「だからあの像があるわけでして」
「はあ」
「あの像は一時大変なことになりかけましたが」
「大変なこと?」
私はそれが何か最初わからなかった。
「何ですか、それは」
「ほら、日本が戦争に負けた
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