6部分:第六章
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あっても勝たなければならないのだ」
そして一人こう言った。
「何があってもな。日本の為に」
森川も園部も互いのことが痛い程よくわかっていた。園部も森川の立場なら同じことを言っていたかも知れない。だが。彼は今の立場からはそれはとても出来なかったのである。言えもしなかった。
だからこそ森川にも断を下した。全体の為に。森川の心をわかったうえでだ。
「・・・・・・許せ」
最後にこう呟いた。そして職務に戻る。何もなかったかのように。
森川は村に戻った。そのうえで村民達に対してことの次第を説明した。
「・・・・・・左様ですか」
「はい」
森川は俯いて村民達に答えた。
「申し訳ありませんが私の力ではどうにもなりませんでした」
俯いたまま振り絞るようにして述べる。
「今我が国は。露西亜とのことがありますので」
「露西亜というとあの」
「駐在さんが話しておられる」
「はい、あの国です」
森川は告げる。
「あの国と戦うならば力が必要なので」
「そうなのですか」
「それでは」
「お願いします」
深々と頭を下げた。
「こうなっては言うことがありません。皆さんにはどうか」
「いえ、よいのです」
長老が頭を下げる彼に声をかけた。
「駐在さんはよくやって下さっていますし」
「そうでしょうか」
「そうですよ、いつも俺達の為に」
「なあ」
村民達は声を揃えて言う。
「それに今度のことだって」
「わし等が無理を言って」
「ですがどうにも出来なかったのは事実です」
それでも潔癖な森川は村民達の声に甘えることは出来なかった。
「それは。変えることができませんでした」
「駐在さん・・・・・・」
「この度のことは何と言っていいかわかりません」
そしてこう述べた。
「それだけです。それでは」
「駐在さん・・・・・・」
村民達はもう何も言うことは出来なかった。森川は彼等の前から姿を消した。そのまま宿舎に閉じ篭った。村民達はそんな彼を見て不吉なものを感じずにいられなかった。
「大丈夫かな」
「ああ、そうだよな」
彼等は顔を見合わせて言い合う。
「若しかすると」
「おい、馬鹿なこと言うな」
「けどよ」
その不吉なものを消すことができないでいた。
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