第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
16話 実像の影
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のである。
「でも、変だよね?」
「えっと、何がですか?」
「だって、音も出ないし変な動きもしないのに、誰の所為って分かるものなの?」
――――それって、まるで誰かの所為にしてるみたいだよ?
状況に置いてけぼりにされながらも、ヒヨリは直面した疑問で首を傾げる。対するティルネルは、その問題提起にラグでも起こしたかのように固まる。あたかも重要な何かに気付いたような表情の黒エルフは、次の瞬間には一気にテーブルに身を乗り出してヒヨリの顔に接近する。
「それですよ、ヒヨリさん!」
「ふぇ?」
「だっておかしいじゃないですか。リンさんもアルゴさんも疑っていなかったし、私も今の今までそういうものだと思っていましたが、そもそも誰も不審な動作を見せていないのに犯人を特定出来ること自体おかしいんです!」
熱の籠った弁にヒヨリは僅かに戸惑うものの、しかし、内容自体は決して難解ではない。ティルネルが何について言っているのかを察知するのに時間が掛かるようなことはなかった。自分の懸念が効果不幸か的を射ていたという事を悟ると、今度は言い知れない胸騒ぎがヒヨリを襲う。自分達が確かめ合っているのは、調査という過程に移行するより遥か前に確認されるべき点だ。よもや、あの2人がぬかるとは到底思えない。つまり、その点についての確証は為されていると考えて然るべきなのだ。だが、如何とも証明し難い禅問答じみた難問は、恐らく証明する手段などありはしないだろう。頭脳労働向きでないヒヨリでさえ指摘できる理論の上での破綻がありながらも、調査解明しようとする2人がヒヨリには酷く不可解に思えてならない。
「………ホントだ………でも、だとしたら燐ちゃん達はどうしてそんな事を調べてるんだろう………?」
「分かりません………けれど、リンさんは確かに《仲間の冒険者》の方のお話を根拠としていたようでした。現にその場でもそう仰っておりましたし………ヒヨリさんは、そのような方に心覚えはありませんか?」
「ううん、知らないよ。強いて言えばアルゴさんくらいかも?」
「アルゴさんの事でしたら、その場に居たわけですし、曖昧な呼び名は使わないかと思います………もっと別の………、………ッ、………これ、は………いぅっ!?」
「大丈夫!?」
深く思考を巡らすような台詞の直後、ティルネルは苦悶の声を上げる。頭を押さえる仕草は頭痛によるものだろうが、ヒヨリが咄嗟に立ち上がって傍に寄ろうとするのを掌で制する。肩で息をしながら、未だ表情に強張りが残るのも構わずにヒヨリに向き直る。
「ヒヨリさん………リンさん達に、連絡を取る手段は………?」
「メールで出来るけど………それより、休まないと………!?」
「そう、ですか………でしたら、今行われている調査は、
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