暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
16話 実像の影
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話



「私ね、今度はティルネルさんのお姉さんとお友達になる。そしたら、難しい事抜きでまた会えるでしょ?」
「………ヒヨリさん」
「それにお姉さんってとっても強いんでしょ?ものすごい技とか教えてもらって、燐ちゃんをビックリさせるの!」
「フフッ………そうなると、何だか楽しそうですね」
「絶対楽しいよ! 私も頑張るから、だから、絶対にお姉さんのこと諦めちゃダメだよ?」
「………はい!」


 諦観による悟りではなく、目標への渇望へ。ティルネルの心持ちの変容を齎したヒヨリは満足げに笑顔を作りつつ、森を見た。約束を交わしたら、違えるという選択肢はヒヨリにはない。燐ちゃんやアルゴならば役立つ情報の十や二十は取り揃えていそうなものであるが、残念ながら、ヒヨリ自身は周囲の大多数のプレイヤーと同じく、新規のプレイヤーである。精々アルゴから貰った《攻略本》が道標になりそうなのだが、頼れる両名が頭を悩ますティルネルについての情報が得られるかと考えた時、その可能性は限りなく低い。今まさに情報収集に尽力しているであろう彼等にメールで質問するというのも考えたが、頑張っている最中に水を差すようで憚られる。やむなく、ただ漠然と《エルフがいる》と認識している森を見つめる他無い。
 自分は悩んでいても答えは出せない。出せるだけの情報を持っていないし、収集するだけの手段を持ち合わせていない。手元の少ない情報をもとに捜査する2人に純粋な尊敬を覚えつつ、そういえば燐ちゃんは昔からテストのヤマ当てが上手だった事を寄り道気味に想起しながら、心の隅に湧きだした劣等感を吐き出すように大きく息を吐く。


「………あれ?」


 そして、情報収集に出ている2人について、ふと疑問を抱く。


「ティルネルさん、燐ちゃんとアルゴさんって何しに外に行ったのかな?」
「え………私はてっきり《エルフの将校が音も動作も要さずに他の部隊を召集する術》について調べていたんだとばかり………」
「あれ、そうだっけ?」


 悲しいかな、ヒヨリは《レアエルフ確保》の段階で話し合いからドロップアウトしていたのである。しかし、これに関してはヒヨリが邪魔だから外されたというわけではなく、複雑な話になりそうな予感がしたヒヨリ自身が無意識に思考を二人に委任した為だ。若しくは、人死にが発端である案件にヒヨリを関わらせたくないという配慮の一端を担う理由である。
 ティルネルへの事情聴取はヒヨリも同席していたのだが当時はまだ未明の時分。リンちゃんサイドの死人関連の事情が隠匿されながら行われた詰問には声を張り上げるシーンも無かったために、うつらうつらと船を漕いでいた事が災いして情報は全くの皆無だ。あの状態から目を覚ました時に申し訳なさそうに謝るティルネルを見て即座に慰めるのだから、全く器用なも
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ