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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
16話 実像の影
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いる姿が、ヒヨリには違和感となった運びだ。グラフィックとして設定されてしまったからどうしようもないという無機質な理由はヒヨリには通用しないのである。


「えっと、そうですね。………他にないというのも理由ですけれど、姉が(あつら)えてくれたものですから、これを身に付けている時は何だか守られているようで安心するんです」
「じゃあ、お姉さんからのプレゼントなんだね!」
「はい。………でも、これをくれた時の姉の顔は、どこか悲しそうな気がしました。きっと、騎士として戦場に永く身を置いていたが故に予覚していたんでしょう。………私の所属していた隊は、カレス・オーの鷹使いの部隊に背後から急襲されてしまったんです」
「だ、大丈夫だったの!?」


 ティルネルの表情に僅かずつ影が差す。怪我やら何やらを頻りに心配するヒヨリに笑みを向けつつ無事を伝えるように頭を振り、そのまま当時の仔細を語る。


「情けない話ですが、部隊が瞬く間に壊滅していく光景に怖気づいてしまって、いつの間にか逃げ出してしまっていたんです。幸い、追手は差し向けられなかったのですが、森は私の姿を見ていたんでしょうね。野営地に掛けられた《森沈みのまじない》に晦まされてしまって、もう自力では仲間の下へ戻る事も出来ません。仮に叶ったところで、私は敵前逃亡の罪人です。その場で処刑されるのが関の山でしょうし、おめおめと戻れば騎士たる姉の勲功に瑕を付けてしまいます」
「そんな事なんてない! きっとみんな心配してくれてるよ! ティルネルさんだって、お姉さんのこと好きなんでしょ? だったら諦めちゃダメだよ!」
「ありがとうございます………でも、もういいんです。野営地に戻れなくなってからも、私は別の部隊を探して森を彷徨いましたが、結局はリュースラの同胞一人とも会えない有り様です。私は、既にエルフとは異なる存在に為っているのかも知れませんね………――――けれど、私は自分を不幸だなんて思ってなんかないですよ?」
「………どうして?」
「姉が守ってくれた、そんな気がするからです。カレス・オーの部隊からの急襲を生き延びたのも、リンさんに助けて頂いたのも………全部、森の断罪から姉が庇ってくれたような気がするのです。――――あ、でも、ヒヨリさんやリンさんやアルゴさんに逢えたのはやっぱり私の運の良さです! 私の行いの良さですからね! あんなガサツな人の縁でヒヨリさんに逢えたなんて思いたくもないです!!」


 最後に突如として腕を組んで、何処ともなくそっぽを向く。そんなティルネルを呆気にとられながら見つつ、決して無理をしての発言ではないと知ると、間もなくヒヨリは笑みを零す。彼女は既に、ありのままを受け入れているのだろうか。或いは、そういう設定なのか。ヒヨリは恐らく前者であると認識しているのだろう。
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