5部分:第五章
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別の問題が起こったのである。
総督府が漁場に対して税をかけることを決めたのである。これは貧しい村にとっては一大事であった。今でも生きるか死ぬかであったのにこのままでは生きるころが出来ない。森川をまた苦悩が襲ったのであった。
森川は村民達の声を聞き、そして辺りの村が何処も大変な窮状にあることを調べた。そしてそれを持って上司のところに向かったのであった。
彼は暑に入った。そこで園部という警部と会った。彼の上司である。
「税を免じて欲しいというのか?」
「はい」
森川は答えた。二人は今園部の部屋で向かい合っていた。森川が立ち、園部は座って話を聞いていた。
「旱魃もあり今のままでも生きるか死ぬかなのです。それで今税を増やされると」
「村が立ち行かなくなるというのだな」
「その通りです」
森川はその言葉にこくりと頷いた。
「ですからここは」
「森川巡査」
園部は彼の顔を見上げてその名を呼んだ。
「今我が国がどういう時なのかわかっているのか?」
「それは」
「わかっているだろう。下手をすれば露西亜との戦争だ」
園部は深刻な顔で森川に語った。
「露西亜は強い」
「はい」
「勝てると思うか?思わないだろう」
「それはそうですが」
両国の力の差は圧倒的だ。正直に言えば誰も勝てるとは思えないものがある。それは誰もがわかっていた。当時の指導者達ですら。あの山県有朋ですら。最後の最後まで迷っていたのだ。そうした相手だったのだ。だがやらなければならなかった。それもまた事実であった。
「今は少しでも力が必要だ」
「その為ですか」
「そうだ。だからこそだ」
「それはわかります」
森川は一旦はそれに頷いた。
「ですがそれでも」
彼は村民達の為に。あえて言ったのである。
「お願いできませんか」
「無理だ」
園部は首を横に振った。
「これは台湾全体のことなのだ」
「しかし」
「では森川」
園部は森川の顔を見据えた。
「では君は。ロシアに敗れてもいいのか」
「それは・・・・・・」
「負ければどうなるか。わかっているだろう」
「・・・・・・はい」
苦渋に満ちた顔で頷いた。
「この前の北京の騒動で奴等は相当なことをしたのは聞いております」
「奴等は鬼だ」
園部は言った。
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