暁 〜小説投稿サイト〜
義愛
4部分:第四章
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

「ええ。そうやって自分から危険なことに向かわれて怪我までされたのに。そんなことを仰って」
「武士はな、そうじゃったからな」
「武士!?」
 あまり聞かない言葉であった。台湾においては。
「それは何でしょうか」
「まあ簡単に言うと軍人だ」
「軍人ですか」
 森川はわざとわかりやすいようにそう説明したのである。
「左様、軍人としての心得か。もっと広く言うと日本人の気構えか」
「日本人の」
「あんたも日本人なんだぞ」
「俺がですか!?」
「他の何だというんだ。ここは日本なのだ」
「はあ」
 こんなことを言われたのははじめてであった。今まで彼等は野蛮人だの蛮族だの言われてきたのである。だが森川は彼等を日本人と呼んだ。そして同じ目線で語り掛けてきているのである。
「それでは当然だろう、あんたも日本人だ」
「俺も駐在さんと同じ」
「そう、同じだ」
 ニコリと笑って述べた。
「日本人なんだ」
「じゃあ俺もその武士になれるんですか?」
 何か狐につままれたような顔になって問う。


[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ