第七夜「桜、回想」
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ある夏の一頁だ…。
§ § §
僕は驚いていた。生徒は自主的にボイストレーニングをしていたのだ!音合わせの時に、どうりでスラスラと歌えた訳だ…。
それを知ったのは、夏の終わりの頃だった。私用で公民館の図書室に来た時のこと。
「あれ?この曲…。何でこんなとこでモテットなんかが…。」
どうやら隣の小ホールから響いてきてるようだ。
「ちょっと気になる…。」
言っちゃ何だが、ここは小さな田舎町。そこの小さな公民館のこれまた小さなホールで…バッハを練習するなんてちょっと考え難い。
僕はホール前に行って、扉の窓から中を覗いてみた。
「…みんな…!」
そこには部活の面々が顔を揃えていた。なぜか親迄も数人見学してるではないかっ!どうなってんだ!?
「あっ!先生だっ!!」
見つかってしまった…。仕方ない、入ってくとするか。
「ひどいなぁ、みんな。こんなこと黙ってるなんて。」
僕は多少苦笑いしながら生徒の中に入った。
すると、後ろで見学していた親達が僕のところに来て「いつもお世話になってます。」と、頭を下げてきた。
「いいえ。こちらも教えられていますよ。」
私は笑いながら言うしかなかった。事実、頭を下げてもらえるような人物ではないしな。
そこへ高橋の両親が来て言った。
「すいません、先生。娘がどうしてもと聞きませんでねぇ。最初は各家でやってたんですが、これだけの人数にもなると手狭でして。それでこの小ホールを借りたんですよ。ここにいる親御さんたちは皆、根っからの音楽好きです。勝手とは承知して…」
「いやいや、怒ってる訳じゃないんです。逆に感謝してますよ。これからも子供たちのために、応援してください!」
あ、熱血教師っぽく見えたかなぁ?まぁ、それはおいとくとして…いやぁ、いい親御さん達だ!
「そりゃ勿論ですよ。ささ、練習を見てあげてください。」
そう言われると何かやりにくいが、まっ、イッチョやりますか?
「じゃあ、お言葉に甘えまして…。」
僕はみんなが待っている前に出て、いつもと同じように練習に入った。
―文化祭は必ず成功する―
そう確信していた…。
§ § §
十月に入り、本番が近づいてきた。もう完璧と言っていいかも知れない。若さとは末恐ろしいものだ。
吹奏楽のみで五曲。その後に声楽だけでモテットを歌い、吹奏楽伴奏でもう五曲。これじゃ新人コンサートだ。一時間半だぞ?学校側がよく許したなぁ…。
ある時、僕のところへ校長が来てこう言ったんだ…。
「よくこれだけやる気を出させたもんだ!今までにあんな人数で直談判にこられたことはないよっ!いやっ、文化祭が楽しみだ!」
そして僕の肩を叩いて行った…。
直談判って…。前代未聞っ
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