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義愛
1部分:第一章
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洋に向かう途中で乗っていた船が沈められ死んでいる。その奥方は終戦後子供達に別れを告げて夫が作り上げたダムに身を投げた。その墓も銅像も台湾にある。夫婦で墓があるのだ。日本風の墓が。
「他にもね。おられるんですよ」
「三人の英霊も」
「ええ」
 台湾沖航空戦において敵の戦闘機に体当たりして散華した三人の航空兵達を祭ってくれているのだ。有り難いことにだ。
「この方もその方々と同じなのですよ」
「どういった方なのでしょう」
「お時間はありますか?」
「旅中ですので」
 私は答えた。
「何のあてもなくぶらぶらしております」
「そうですか。ではこちらへ」
 お年寄りは私を店に案内してくれた。何か日本に昔よくあったような懐かしい喫茶店である。
「御老人のお店ですか?」
「はい、そうです」
 木造のレトロな店の中に案内して答えてくれた。
「私が子供の頃よく見た店でして」
「ですね」
 何となく戦前によくあったような感じの店だ。
「けれどクーラーはありますよ。安心して下さい」
「ははは、そうですか」
 その言葉に肩の力が抜けた。
「リラックスしてね、お話しましょう」
「そうですね。じゃあ」
 木造の古風なカウンターに座りメニューを見る。だが残念なことに中国語なのでよくわからなかった。
「ええと」
「コーヒーはどうですか?」
 お年寄りはもうカウンターに移っていた。そこから私に声をかけてきた。
「いや、この場合は」
「カウヒィですかね」
「随分古い呼び方ですね」
「このお店を見ていますとね」
 私は店の中を見回して応えた。テーブルも椅子も木造で趣きがある。客は今は私以外には誰もいなかった。
「その呼び方で」
「芥川とかそんな感じですね」
「芥川も御存知なのですか」
「日本の作家の本も若い頃読みましたからね」
 カウヒィを用意しながら答えてくれた。
「覚えていますよ。河童とか」
「河童も」
「あれはかなり参っていましたね」
 お年寄りは悲しい顔になって語った。
「あれからすぐだったのでしょう?あの人が自殺したのは」
「はい」
 私はそれに答えた。
「あれは確か遺稿の一つです」
「やはり」
「どうも色々あったようですから」
 私は語った。
「芥川は死ぬ前の二年程はずっとああでした」
「そうなのですよね、それまではあんなことはなかったのに」
「悩んで悩んで悩んだすえにだったのでしょう」
「自殺したと」
「けれど名前は残ってますがね」
 私は言った。
「自殺したのは残念ですが」
「けれど。そうするしかなかったのかも知れませんね」
 お年寄りは私にカウヒィを差し出して言った。
「あの方と同じで」
「そのあの方ですが」
 私はカウヒィを手に取りながら尋ねた。
「どういっ
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