第三夜「歩道橋幻影」
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
んでるから、全部解決したら、またこの歩道橋に来てみてよ。僕、ここよく通るからさ。」
一人で登った歩道橋…それを今度は二人で降りてきた。何だか不思議な気分だ…。
「じゃあ、頑張ってね!」
彼が手を差し出してきたため、僕はそれに答えた。
「分かった。期待に添うよう頑張るから。」
将之と僕は堅い握手を交わした。
そして、笑って彼とは別れたんだ。
* * *
僕の悩みが晴れるのに、かなりの時間を要した。
先ず、一連の流れをすべて両親に打ち明けた。
最初は唖然とし、驚き惑っていたけど…僕のために出来得る限り助けてくれた。全く、不肖の息子だ。
知り合い同士の争いは、結局、双方に責任があったのだ。当たり前と言えば当たり前なんだけどさ…。自分を守るために、互いが僕に嘘を吐いていたんだからね…。全く…顔見知り程こういうのは怖いと思い知らされた…。
残った金銭問題もどうにかなりそうだ。まぁ…今すぐと言う訳には行かないまでも、少しずつ解決出来る見通しがついたから。
僕はこの件でかなりの痛手を負ったが、心にあるのは…あの晩冬の夕暮れに出会った彼のことだった。
彼のお陰で、今を生きて行く希望を持つことが出来たんだから。
「もうそろそろ…会いに行こうかな…。まぁ、会えるかどうか分からないけどさ。」
季節は晩秋。もう少し経てば、彼と会ってから九ヵ月経つ。
一年も経ってないのに、もう何年も会ってないような気がするなんて…。恋人でもあるまいに。
長くて短い日々。何も考えず死のうとしていた、あの頃の自分とは違う。今度は堂々と、彼に会いに行ける。
* * *
数週間、いつものようにあの歩道橋へと足を向けた。しかし、時間が合わないのか、ずっと会えず終まいだった。
そんな中のある日。フッと下に目をやると、階段の脇に花束があることに気付いた。
初めは何とも思わず、「誰かここで亡くなったんだなぁ…。」ってくらいにしか思わなかった。そのことを何となく母に聞いてみると、「ここ数年、そんな話しは聞いてないけどねぇ…。」と、こう返された。
僕は何だか胸騒ぎして、迷惑も顧みずに歩道橋近くの交番に尋ねることにした。
幸いここの警官は穏やかな人で、僕にあの歩道橋での出来事を語ってくれた。
「ああ、歩道橋下の花束のことか…。そうだなぁ、もう十四、五年位前になるか…。あの歩道橋でな、飛び降りた青年がいたんだ。とても優しい青年でなぁ、毎日この前を通るときには、挨拶してくれたもんだったよ。残念なことに、即死だったんだがな…。」
* * *
今から十五年前の話。
一人の青年がここで死んだ。この歩道橋からの投身自殺だった。
遺書は残しておらず、両
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ