第二夜「夜想曲」
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しさも淋しさも、この曲は全て表現してる…。演奏してる人はきっと、心の澄んだ人ね…。」
私は思わず微笑んだ。その瞬間、はっきりと人の声が聞こえた。
― この曲は君に捧げる曲なんだよ。 ―
音は止むことなく響いてる。幻聴かと思ったけど、それにしてもリアリティのある声だった…。
「あなたは誰?どうして私にこの曲を…?」
私は思い切って尋ねてみた。その理由を、どうしても聞かなきゃならない気がした。
暫らく夜想曲は響いていたけど、とうとう終止符を打った。
私は一人、小さな拍手を贈った。
― この曲は君のものなんだ。僕が書いた君への想い。僕はいつも見ていたんだ。この砂浜を一人、とても幸せそうに散歩してる君を。だから、どうしても君に、この想いを伝えたかったんだ…。―
私は驚いた。私はこの人を知っている。でも、誰なのか思い出せずにいた。
「あなたは誰?私はあなたのこと、知ってるような気がするわ。でも、どうしても思い出すことが出来ない…。」
いつ出会ったんだろう?なぜか胸の奥が熱い。
― 会ったことあるよ。夢の中だけどね。―
「夢…?」
その瞬間、私は思い出した。そう…私は以前、夢の中でこの人に会っている。でも…それは飽くまで夢の中の話…。
なぜこの現実にいるのかしら?しかし、見えてはいないけれど、確かに感じる。
「これは夢なの…?」
もしそうだとしたら、なんてリアルな夢なんだろう。
― 夢じゃないよ。これは僕の夢だから…君の夢じゃないんだ。―
私は一瞬ポカンとした。それを理解するのに、少し時間がかかった。
でも、もしそうだとしたら…私と話しているこの人は誰?
「だったら、これは私には現実ってこと?」
― そうなるかなぁ。―
何だか間が抜けてる返事だ。
「それじゃあ、あなたにとって、私は夢の中の人ってこと?」
― そうなるね。―
やっぱり私には理解不能な状況だけど、不思議と違和感や恐れは無かった。
それは、この青白く輝く月明かりのせいかも知れない。
― いつかきっと逢いに行くから、それまで待っていて欲しい…。―
月光の中に、輝ける青年の姿が映った…。
でもそれは、私が創りだした幻影かも知れない。在りし日に見た夢の中の記憶。自分の思い描く理想の恋人…。
「絶対来てくれるんだったら、忘れずに待っているわ。その時に今の曲を聞かせて。私のための夜想曲を…。」
私は微笑んで、そう答えた。
― もちろんさっ!その時が来たら、今は言えない言葉も一緒に伝えるから…。―
そう言い終えると、彼の姿は月光の中へ、溶けるようにして消えていった…。
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あの時
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