3部分:第三章
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その気付かないまま真剣な顔になっていて。そのうえでまた言うのであった。
「いよいよってわけだな」
「おうよ」
互いに頷き合う。横目で見合いつつ。
「それではっつあんよ」
「留さんよ」
仇名でも呼び合う。
「腹は括ってるよな」
「そっちはどうだい?」
「勿論だよ」
「こっちもだよ」
また言い合うのだった。
「その西洋人の珈琲ってやつ」
「拝んでみせようぜ」
殆ど出入りみたいなやり取りになっていた。とにかく暫くしてその珈琲が来たのであった。まずその珈琲が入れられているものを見て言うのだった。
「また変わった湯飲みだな」
「何か出てるぜ」
「カップです」
「カップ!?」
「何でえそれは」
娘の言葉を聞いてまた言うのであった。
「聞き慣れねえ言葉だが」
「それも西洋のやつってわけだな」
「はい、そうです」
娘はその盆の上にある白いカップをここで二人の間にそれぞれ置いた。白い皿の上に置かれた白く薄い、何か繊細な外観のものであった。
そしてその中にあるものは。また随分と真っ黒いものであった。黒く白いそのカップなるものの底が見えなくなってしまっている。二人はその真っ黒いものを見てまた言うのであった。
「ひょっとするとこれが」
「あれかい?」
「珈琲かい」
「これが」
「はい」
娘はまた実に明るい声で彼等に答えたのであった。
「そうです。これが珈琲です」
「何だいこりゃ」
「墨か!?」
磯八が顔を顰めさせてまずはこう考えた。
「これは」
「墨を湯に入れたものかい!?」
「違いますよ」
だが娘はそうではないと言うのだった。
「そういうものではありません」
「じゃああれだな」
今度は留吉が考えた。彼の見たところでは。
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