ふたりの時間
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「こんにちはぁ」
今日は日曜日だから、お昼からお店に来てみたんだけど、しんと静まり返って誰もいない。
ありゃ、みんな出かけちゃったのかな?
なんて、勝手知ったる休憩室を覗くと飛白が座って本を読んでいた。
「やあ、いらっしゃい」
私に気がついた飛白が顔を上げてそう微笑んだ。
「裏子ちゃんたちなら、今、買い出しに出ているんだ。
僕は出かけるのが面倒で留守を預かっていたけれど、
君が来てくれたってことは、行かなくて正解だったようだね」
なんて、いらずらっぽく笑ってくれる。私もなんだか素敵な偶然に嬉しくなって、
「ふふっ、幸せな一日なりそうだね」
なんて笑顔になってしまう。いつもお店じゃ2人になるなんて、ほんと珍しいことだから。
「ぁ………………。いや、そう…………にこにこされると…………………」
見る間に飛白の頬が染まってゆく、照れてる、のかな? ちょっと珍しいよね。
「…………………す、すまない。ちょっと待ってくれ。
たぶん、変な顔になってるだろうから………………………」
そう言って大きな手で顔を隠してしまった。
変じゃないけど、赤くなる飛白なんて珍しいから、ちゃんと見てみたくなってしまう。
「そんなに変じゃないよ? だから顔、見せて欲しいな」
「見せたくないからこうしてるんじゃないか…………!
…………………どうして、僕はこんなことで恥ずかし……く……………」
なんとか顔を覗きこもうとする私から顔を背けながらぼそりと呟く。
「…………ちがう………嬉しいん、だ……僕は………君と、2人で過ごせることが………
君と……2人だけで話すのが……僕にとって…………幸せ……なん、だ…………」
真っ赤な顔の飛白の言葉に少しびっくりしてしまう。
だって、別にお店の中でしか会っちゃいけない。なんて決まってるわけじゃないから、
2人で過ごそうと思えば、過ごすことなんて簡単なのに……
「こんな些細な偶然がそんなに嬉しかったの?」
私だって、思わぬ偶然は嬉しかったけど、そこまで?
「その………君から…すれば……些細なことだ、ということは……分かってるんだ………
でも、それの何気ない幸せが………新鮮で……僕には、キラキラして見えるんだよ………
今まで、掴んでは…いけないと……思い、込んできた……そんな、幸せ、が…………」
飛白の孤独に少し胸が痛くなる。
こんな何気ない小さなことで、心を大きく揺さぶられるほど独りぼっちだったんだね。
「でも……ようやく………それを、掴んでもいい、気がしたんだ………君と、なら……
だから………僕と……………………………」
飛白は、幸せになりたい。ってことだよね? それってすごくすごく…嬉しい
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