先生からの指導
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少しお手伝いしただけだよ」
「ほんと?」
「もう一度弾いてみてご覧」
「う、うん!」
さっきの感覚を忘れないようにと思いながら、呼吸を整えて弓を滑らせる。
あぁ、なんて気持ちいいんだろう。
僕の片思いの相手だけど、相手だって嫌っちゃいないよね。
だってこんなにも楽しくおしゃべりしてくれるんだもの。些細な日常の1コマだけど、
情熱的な運命の恋とは違うけど、僕はこんなにも君が好きです―――…
だから君――、どうか君も良い1日を過ごせるように僕は願うよ――…
エドワード・エルガーというちょっと堅物な、イギリスの紳士が恋をしたお嬢さんは、
きっと素敵な女だったんだろうな。音楽教師だった人の、百年以上も前の恋がこうやって
音楽として残ってるなんて、素晴らしいことだよね。
あぁ、それにしてもなんて気持ちいいんだろう。音は歌に、歌が愛になっていく――…
弾き終えても余韻に心が震えて、弓を下ろせずにいると、パチパチとたくさんの拍手を
もらってしまったから、慌ててお辞儀をする。
「あ、ありがと!」
「いやいや、よかったで!」
「お前にぴったりのきれいな曲だな!」
「とても素敵に弾けていたよ」
「うん‥‥自分でもよくわかんないんだけど、すごく気持ちよく弾けた気がする。
変な感じだけど、楽譜の向こう側にある世界っていうの、かな?」
「作曲者の世界とのリンクがうまくいったってことかな?」
「そう!そんな感じだったの!」
はしゃいだ気持ちがなかなか収まらなくて、声もどうしたって弾んでしまう。
「君の先生も、それを感じたから発表会にって、言ってくれたんだと思うよ」
「そ、そうかな?」
それはあんまり自信がないなー。
「ところで、その発表会はもちろん一般でも聴きに行くことは出来るんだろう?」
「え、できるけど‥‥もしかして聴きに来る、とか?」
それはちょっと恥ずかしいかも‥‥だって、私より上手な子はいっぱいいるんだもん。
「お、それええな!みんなで応援しに行こか!」
えっ!んごーも来るの!?それはちょっと、知り合いだと思われるのが怖い‥‥気がする。
「いいな!みんな上手なんだろ!?」
「クラッシックの発表会だよ。私以外の人もたくさん演奏するし、
裏子とんごーは、退屈して寝ちゃったりしない?」
応援は嬉しいけど、先生の生徒が何人も演奏発表するんだから、
途中で寝ちゃってイビキとかで、迷惑にならなければいいんだけど。
「それもそっか。お前の演奏ならいつでも聴けるんだもんな!」
「嬢ちゃんの演奏は気になるけど、ほかの子はどうでもええしなぁ‥‥」
「なら二人の代理で、花束くらいは届けておくよ」
「余計なことして香澄に恥かかせんなよ!」
「えっと、じゃあチケットは1枚
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