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Impossible Dish
第一食
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だと思っているんだろうな、と思いつつおざなりに受けていた一般教育を積極的に取り組み、毎度行われる確認テストも日に日に成績を延ばしていく。隙間時間に欠かさず勉強をし続けた。
 
 時間さえあれば与えられた厨房に篭った。幸い学校で習うような教育はすべて薙切の屋敷内で行われることだ。一日中屋敷内にいられるのだから、ちょっと空いた時間があればすぐに厨房に入ることが出来た。
 仙左衛門の厚いバックアップもある。料理に関する参考書に隙はなく、一流の料理人になるために必要なあらゆる事項を取り揃え、同時に限られた時間だが仙左衛門が直々に指導した。

 一言で言えば過酷だった。それはおよそ四歳児が送って良いような日課ではなかった。だがしかし、当のなおとの顔は四歳児に相応しい、光輝いた笑みを浮かべていた。

 確かに凡人だ。味を超精密に分析したり、それを表現できるなんて事は出来ない。でも、努力は出来た。努力をすれば才人に近づくことが出来た。
 確かに追い越せないかもしれない。追いつけないかもしれない。でも、努力を怠る理由は無かった。今までのようにただ薙切の恥として生きるくらいならば、自分を見下す人たち全員を見返せるような腕を目指して励みたかった。

 そして五歳になった。なおとの誕生日の昼に、仙左衛門がなおとの厨房を訪ねてきた。いつもなら忙しいから夜遅くに指導しに来てくれるはずなのに、と思いつつも仙左衛門を快く迎え入れ、彼が指導するときに愛用している椅子を引いてきてそこに座ってもらう。
 長く蓄えた雄雄しい髭を一撫でしつつ、威圧的な外見に朗らかな笑みを浮かべながら礼を述べ着席した仙左衛門がふむと前置きを入れた。

「調子はどうかね」
「基本徹底の半ばです。教えてもらった通り、丁度今習ってきた全ての復習を終えたところです」

 五歳児なのに大人びえた口調で答えたなおと。一般教育の中に作法もあり、それをきちんと身に付けていることの証明なのだが、これはなおとが仙左衛門のことを衷心から敬っている現われでもあった。
 因みに与えられた数多の参考書には入門、基本導入、基礎徹底、応用導入、応用徹底、発展の六段階が設定されており、なおとはその二段階までをこの一年で完璧に習得してみせたのだ。加え調理理論、栄養学、衛生学、栽培概論、経営学といった料理人として必要な事項それぞれの参考書全てだ。それを成し遂げた印は、この厨房にある。

 ちょっとした大きな部屋くらいの厨房には、あらゆるところに紙が貼られていた。壁だけと言わず床にも天井に届きうるほど積み上げられており、その一枚一枚にはびっしりと文字が書き込まれている。料理の実習をするためのスペースはきちんと確保されており、そこだけ理路整然と掃除されているせいか逆に不自然に映った。
 調理台の上に並んでいる沢山の皿
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