五話:乞食と日常
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ほど優しい人間じゃないんだ」
「っ! リヒター……」
後ろで驚いて俺の方を振り向く気配がするがこれ以上動きたくないので無視する。
しばらく、俺の背中をジッと見つめる視線が続いていたがやがてそれもなくなる。
「おおきに……。それからおやすみ、リヒター」
「……おやすみ、ジーク」
その言葉を最後に俺は幸せな夢の世界へと旅立っていった。
「………おはよう、ジーク」
「おはようや、リヒター」
「なあ……何で俺はお前に組み伏せられているんだ?」
「起こそうとしたら手刀してきたからや」
どうやら、また昔のくせが再発したらしい。
組み伏せられたままの状態で時間を確認すると6時30分だった。
普段は絶対に起きないであろう時間だが今日は事情が事情なので仕方なく起きる。
「それにしても、やけに鋭い手刀やったけど、リヒターもなんかしとるん?」
「対目覚まし専用格闘技なら納めているぞ」
「絶対それ流派やないやろ」
当然だ。これは夢と現の間で戦う挑戦者のみに身に着けることが許された奥義なのだからな。
などとカッコよく言ってみるがようは寝坊助が度重なる寝坊の末に身に着けた無駄な技である。
因みに効果はより寝坊する確率が上がるだけという悲惨な物だ。
だからこそ、封印したのだがこうして偶に発動してしまうのが厄介な所だ。
「それにしても……なんか、こうやって起こすのって新婚さんみたいでええな」
「お前の中での新婚夫婦は毎朝どちらかを組み伏せているのか」
「ふ、夫婦……えへへ……夫婦……」
「まさか、自分からふっておいてトリップするとは思わなかったぞ」
顔に手を当ててだらしなくほおを緩めるジークに若干引きながらも取りあえず脱出して飯を作る。
今日ぐらいジークにやらせようかとも思ったが本人が今のところ役に立たないので放置する。
持ってきておいた材料で簡単におにぎりを作り、未だにトリップしているジークの前に差し出すとハッとしてすぐにお礼を言って食べ始める。
随分と現金な気もするがいつものことだから気にしない。
「それじゃあ、俺は学校に行くからな」
「ん、いってらっしゃい」
食べ終えてすぐに学校に向かい始める俺。今日は余り時間がないからな。
と、忘れるところだった。渡す物があったんだ。
「ほら」
「なんなんこれ? 開けてもええ?」
「ああ、ちょっとしたプレゼントだ」
「これ……リボン?」
俺が渡したのは青色のリボンだ。ジークの目の色に合わせてみた。
この前好きな物を買ってやると言って結局買ってなかったからな。
自分から言った以上は約束を破るのも嫌だから買ってきた。
「お前いつも同じ色のやつをしているだ
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