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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十八話 宣戦布告
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「宇宙統一は私の夢、いや義務だ。シャンタウ星域で一千万人を殺した、あの時から私の義務になった。ローエングラム伯とは関係ない。統一しこの宇宙から戦争を無くす。誰もが安全に、穏やかに暮らせる世界を創る。彼の望んだ宇宙と私が望む宇宙は似てはいるが同じではない、同じであってはならない……」
墓を一瞥するとヴァレンシュタイン司令長官が歩き始めた。
自分に言い聞かせるような口調だった。司令長官の斜め後ろを歩きながら横顔を見た。感情が見えない、人形のように無表情だ。ヴァレンシュタイン司令長官がローエングラム伯を忘れる事は無いのだろう。伯を殺してしまった事への罪悪感、喪失感が司令長官の心から消える事は無いに違いない。司令長官はこれからもそれを心に抱えて生きていく……。
視線に気付いたのかもしれない、司令長官が私を見た。
「心配は要りません、大丈夫です」
「……」
「出征を明日に控えて少し心に不安が生じたのでしょう。急にローエングラム伯が生きていれば、伯に会いたいと思いました」
私が納得していないと思ったのだろう、司令長官が苦笑を浮かべた。ようやく人間の表情に戻った。
ローエングラム伯の死は必然だった。余りにも野心を表に出し過ぎた。司令長官が居なくても何時かは死ぬ事になっただろう。だが司令長官の存在がローエングラム伯を死に追いやった事も事実だ。私がそれを否定してもどうにもならない。そして司令長官もそれを否定して欲しいなどとは思っていない。私に出来る事は共に歩む事、司令長官の重荷を共に背負い少しでも軽減する事だ。何処まで出来るかは分からないが……。
「小官は閣下と共に歩む事を不安に思った事など有りません。どれほどの苦難であろうと共に歩む覚悟は出来ています」
「……大佐」
司令長官が足を止めた、皆も足を止めた。司令長官は私をじっと見ている。嘘では無い。第六次イゼルローン要塞攻防戦、あの時から私の心は決まっている。
「でもお願いですから御一人で抱え込むのはお止め下さい。小官はそれだけが心配です。話せない事も有るとは思いますが少しでも御心の内を漏らして戴ければと思います」
「……有難う」
照れくさそうな、何処か幼ささえ感じさせる小さい声だった。そしてまた歩き始めた。
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