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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十八話 宣戦布告
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ですね」

政府、軍上層部の間で防衛方針を巡っての話し合いが十月に二回行われた。政府側はトリューニヒト議長、アイランズ国防委員長、レベロ財政委員長、ホアン人的資源委員長。軍側はボロディン統合作戦本部長、ビュコック司令長官、ウランフ副司令長官、グリーンヒル総参謀長、そして私。軍は帝国軍を同盟領内に引き摺り込んでの決戦を主張し政府側はイゼルローン、フェザーン両回廊での防衛戦を主張した。時に感情的に、時に理性的にそれぞれの防衛案の是非を話し合った。

そこで分かった事は民主共和政国家の政治家達が支持率の低下をいかに畏れるかという事、そして同盟市民への不信感だった。同盟市民に選ばれた政治家達がその選んだ同盟市民に不信感を持つ、その判断力に疑問を持つ、不可思議な事では有る。だがトリューニヒト議長だけではない、アイランズ、レベロ、ホアンの各委員長も同様だった。それを考えれば政治家が市民に対して不信感を持つのは当然の事なのかもしれない……。

“支持率等というものはどれほど高くとも安心出来ない、市民の支持等という物は極めて移り気で不安定な物だ。事が起きればあっという間に下がる。だから政治家達は支持率の低下には極めて敏感だ。一番拙い事は支持率が下がり続ける事だ。そうなれば政府はレームダック状態になる、何も出来ないし決められない。両回廊を放棄すればそうなる可能性は非常に高い。その状態で帝国軍を同盟領内に引き摺り込んでの迎撃など到底無理だ。あっという間に地方星系は同盟から脱退して帝国と和平を結ぶだろう。そうなれば同盟は戦わずして瓦解しかねない”

トリューニヒト議長の言葉だ、沈痛な表情だった。そして言葉を続けた。
“君達は優秀な軍人だ。だから帝国軍の事は分かるだろう、それは彼らが敵だからだ。しかし同盟市民の事は分からない、何故なら君達が彼らと戦う事は無いからだ。だが我々政治家は違う、我々は常に同盟市民に気を許さずにいる。彼らは我々にとって潜在的に敵なのだよ”

政治は軍事に優先する。そしてその政治面での制約が軍事的な手段を制限してしまうとは……。敵よりも味方が足を引っ張るのか……。
『イゼルローン要塞にはカールセン中将の第十五艦隊を送る』
「分かりました」
『残りの艦隊はフェザーン回廊に展開する。つまり、貴官への増援は第十五艦隊だけだ。それ以上は無い……』
「已むを得ません。帝国軍の主力はフェザーンでしょう」
グリーンヒル総参謀長が頷いた。フェザーンには要塞は無い、帝国にとって攻略しやすいのはフェザーンだ。

『カールセン中将には貴官の指示に従うようにと言ってある。彼も貴官の実力は十分に理解している。問題は無いだろう。厳しい戦いになると思うが宜しく頼む』
「分かりました」
カールセン中将は叩き上げの実戦指揮官だ。総参謀長は私の様な若造の指
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