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碇知盛  〜義経千本桜より〜
1部分:第一章
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ちられるのですね」
「それはそうですが」
「何、私のことはもうそちらの方から御聞きしている筈です」
 彼は明るく笑って弁慶を見つつ言うのだった。
「まあそういう事情で。それに貴方は天下の名将」
 今度は義経に対して言うのだった。
「それをむざむざ失ってはいけません。ここは私にお任せ下さい」
「かたじけない。それでは」
「貴方を頼朝公に討たせることはしません」
 見れば気品がありそのうえ闊達な表情である。顔立ちも悪くなくよく日に焼けている。そのうえ身体つきも非常にいいものであった。義経は匿われその部屋に入ったところで弁慶に対して話すのだった。
「あの主だが」
「銀平殿ですか」
「うむ。随分と気品のある御仁だな」
 彼は銀平のそうしたところをすぐに見抜いたのである。
「ただの店の主とは思えぬまでにな」
「確かに侠気のある方です」
 弁慶はまず主にこう述べた。匿われたといってもまだ安心してはいなかった。
「ですが気品もですか」
「そう、それがある」
 彼はまた銀平に対して話した。
「かなりな。まるで宮中におられたかのように」
「それは気のせいではないですか?」
「幾ら何でもそこまでは」
 弁慶以外の家臣達はそれは否定するのだった。
「確かに立派な方ですが」
「それでも」
「私の気のせいか」
 義経は彼等の言葉を受けてこう考えなおした。
「それでは」
「そうです。何はともあれ今は落ち延びることを考えましょう」
「九州まで」
「うむ、そうだな」
 何はともあれまずはそれであった。彼等は何はともあれ九州に落ちようと考えていた。そうして銀平ともその際に使う舟のことを話していたのだが数日後であった。店のおかみが義経のところに来て言うのだった。
「鎌倉の追っ手が迫っているそうです」
「何っ、もうなのか」
「はい」
 おかみは義経達の部屋を見て告げていた。

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