4部分:第四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
第四章
「二十反だ」
「二十反・・・・・・」
「それ程までに」
「そうだ。二十反だ」
それだけ与えるというのである。それを聞いて村人達も家臣達も大いに驚く。しかし信長は雪の降る中でそのまま言葉を続けていくのだった。
「そのうちの半分を費用にしてだ」
「十反を」
「どうされよと」
「誰でもよい」
今度はこう告げたのだった。
「その家の隣に小屋を作ってやれ」
「小屋をですか」
「それを」
「そうだ。作ってやるのだ」
また言うのだった。
「そこにあの物乞いを置いてやるのだ」
「えっ、まさか」
「あの物乞いをですか」
「そうだ。置いてやれ」
信長は言葉を続けていく。
「そこに住まわせてやるのだ」
「家をですか」
「そこにですか」
「そうだ。置いてやるのだ」
彼は言うのであった。物乞いについて。
「そのうえで麦や米を少しでよいから分けてやってくれ」
「食べさせてやれというのですね」
「あの者を」
「そういうことだ。そうしてくれれば有り難い」
信長は言っていく。彼等はさらに話していく。
「それがこの信長がそなた達に告げることである。よいな」
「は、はい」
「わかりました」
村人達は信長の言葉に平伏せんばかりであった。その言葉を聞いていて家臣達も問うのであった。
「またこれは」
「どういった御配慮なのですか?」
「今日だからよ」
信長はいぶかしむ家臣達に対して告げた。
「今日だからこうしたのだ」
「今日だからとは」
「一体」
「耶蘇教の話だ」
またこのことを話に出すのだった。南蛮から渡来したその教えのことをである。
「あの教えの主、釈迦の様なものか」
「その者が一体」
「どうしたのでしょうか」
林と柴田が彼にいぶかしみながら問うた。
「何処かで話を聞いたと覚えていますが」
「それは」
「その主が生まれた日だ」
信長はその日なのだと彼等に話した。
「その日には誰かに対して贈りものをするらしい。それがこの日だというのだ」
「そうだったのですか」
「それが今日だったのですか」
「だからよ。これはわしからの贈りものよ」
それだというのである。
「だからよ。それにじゃ」
「それに?」
「といいますと」
「祖先のことはもう許されるべきなのだ」
その物乞いの先祖が常盤御前を殺した罪のことだ。それはもういいというのである。
「もうな」
「だからこそなのですね」
「それで」
「見よ」
ここで空を見上げる信長だった。まだ雪が降っている。
「この雪をどう思うか」
「どう思うかといいますと」
「それは」
「奇麗であろう」
こう言うのだった。
「白くのう。その雪を見てじゃ」
「はい、そうですね」
「まるで何かを祝う
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ