1期/ケイ編
K10 ごまかせない“キミガスキ”
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
大学での講義を終えたケイは、バイクに跨りながら、ケータイの未来の番号に電話をかけた。
《おかけになった電話は、電波の届かない所にあるか、電源が入っていないため、かかりません。くり返します。おかけになった電話は――》
ケイはケータイの通話ボタンを切ってから、バイクのハンドルに突っ伏した。
「み〜く〜…声聴きてえよ〜…」
いつもなら週に1回は電話して、他愛もないおしゃべりをするのが小日向兄妹の習慣だった。だがこの所、いつ電話しても未来は留守電だ。最初は折り返し連絡が欲しいと留守電のメッセージ登録をしていたが、今はその気力さえ湧かない。
(かくなる上は学校か寮に突撃するしかないか)
リディアン音楽院は女学校だ。男の自分が出待ちしたり呼び出しをしたりするのは度胸と胆力と根性が要る。
(書類上では兄だろ俺。立花ちゃんにどういう対応したかも気になるし。怖じるな俺。行けよ俺。よし!)
ケイはバイクを発進させ、リディアン音楽院を目指そうとした。
ピロリン♪
メッセージの着信音と振動に、ケイはもしかしてと思い、勢いよくボタンを押した。
送信者は未来。笑顔が浮かびかけ――
“今、ノイズから隠れてるの。大きな音に反応して襲ってくるみたいで、動けない”
――笑顔の途中で表情筋がフリーズした。
その間にもメッセージは次々と更新されていく。
“バチが当たったみたい”
“あの過去の傷が治ってない響に「友達でいられない」なんて、何より辛い言葉をぶつけた”
“兄さんの電話もずっと無視して、話を聞いてあげようとも思わなかった。ひどい妹だ、わたし”
ケータイに着信が入った。ケイは急いで電話に出た。
「未来! 今どこにいる。すぐ駆けつけるから……」
《わたし、響とケイにひどいことした。今さら許してもらおうだなんて思ってない。それでも一緒にいたい。わたしだって戦いたいんだ。どう思われようと関係ない。響とケイに背負わせたくないんだ》
砂利を踏む音がした。
《わたし! もう迷わない!》
ブツッ! ツーツーツー…
ケイは乱暴にケータイをポケットに突っ込むと、すぐさまバイクを発進させた。
すれ違う通行人や車がない道まで出て、無人の地点に来たところで、ケイは詠った。
「 ――Harmones A-lens toges tron―― 」
聖詠に応えてA・レンズのシンフォギアが起動する。手足と胸板をアーマーが覆い、バイザーが視界を碧に塗り替える。
ギアはトップに。アクセル全開。限界まで車体を酷使し、とにかく走る。
視界の左右の景色が次々と後ろへ流れていく
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ