第八話 さいかい
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人の噂も七十五日。
このことわざの通り、時が流れるにつれてうわさはどこかへ消えていくものだ。
人の興味なんてものは長続きしない。すぐに別のものへと移っていく。
それが人づてに聞いたうわさならなおさらだ。
今やあの第一層での『事件』をとやかく言うやつらは《攻略組》と呼ばれるようになった、アルゴが言うところの《フロントランナー》たちの中ぐらいにしかいない。
そもそもその事件に関しては「やった人がいる」といううわさであって実名が流れたわけではない。確証もない、ただの都市伝説扱いとなっていった。
ましてや、今プレイヤーたちの興味が他に向かっているところなのだ。頭の片隅にあったとしても、話題になることはない。
「で、その話題になってる注目のプレイヤーとしてはどんな気分よ」
「ふむ、悪くはないね」
「微妙なお答えどうもありがとさん……っと」
リュウヤが槍を一振りすると残り体力の少なかったモンスターは断末魔を叫びながらこの場から消えていった。
「やはり君は強いね、リュウヤ君」
「あんたの防御テクには敵いそうにないけどな、ヒースクリフ」
言うと、ヒースクリフはなにも言わずに小さく笑った。
つい一ヶ月ほど前から攻略組に参戦し始めたヒースクリフだが、彼のうわさは前々から最前線にいるプレイヤーの耳に届いていた。
曰く、最高の防御を持つプレイヤーがいると。
そのうわさに恥じないくらい、ヒースクリフの防御テクニックは攻略組の中でも抜きん出ていた。
まさに鉄壁。
迷宮区の奥深くに潜む化け物相手でさえ、彼に攻撃を届けることは容易ではない。
その実力が攻略組だけでなく下層にいるプレイヤーたちにも伝わっているらしく、全プレイヤーの希望とも言える存在となっていた。
そして、ここ第二十四層《迷宮区》の一角。
最低のプレイヤーと最高のプレイヤーがパーティーを組んでいた。
キッカケは些細なことで、迷宮区に入る前にたまたまはち合わせ、パーティーを組んだだけだ。
「にしても、まさかあんたから誘われるとは思わなかったよ」
「言っただろう、君とは一度パーティーを組んでみたいと」
確かについ一週間くらい前から言われていたことだ。それがまさかいきなり実現するとは誰が思うだろう。
言われた時はお世辞だと思って「機会があればな」と適当に流したが、二度も真顔で言われればそこそこ買ってくれているのだと分かる。
「でも、なんでまた俺みたいな偏屈な野郎に興味を持ったんだ?」
けれど、リュウヤはヒースクリフが自分に興味を持つ理由に心当たりがない。ヒースクリフとは違い、忌み嫌われる存在で、そもそもいても気づかれないような影の薄さだ。
「理由が必要か
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