1期/ケイ編
K8 終わりの名を持つ者
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を出して彼女と反対方向を見回した。
見よう見真似の哨戒でどこまで役立てるかは疑問だが――
「! おい風鳴! あっち!」
「あれは…」
ツバメ型ノイズが旋回する下、湖に突き出したテラスに凭れかかる、喪服の女。女の手にはソロモンの杖が握られていた。
「命じたこともできないなんて、あなたはどこまでワタシを失望させるのかしら」
「フィーネ…っ」
クリスの声は怯えに染まっている。まるで親にイタズラを見咎められた幼子だ。
「フィーネ?」
「音楽用語で楽譜の終止記号。終わりを意味する名だ」
「終わり……」
とにかくケイは翼ともどもアームドギアを構えた。ソロモンの杖を持つ以上、敵には違いない。ケイには響のような説得はできないから、せめて守りは固めなければ。響を、そして響が守ったクリスを。
「〜〜っこんな奴がいなくたって!」
クリスが響を突き飛ばした。ふらつく響をケイは慌ててキャッチした。
「戦争の火種くらいあたし一人で消してやるッ! そうすればあんたの言うように人は呪いから解放されて、バラバラになった世界は元に戻るんだろッ!?」
「――戦争の火種?」
それがクリスの戦う理由、フィーネに従う理由なのか。
何と無理やりな。動機としてはこれ以上ない素晴らしいものなのに、彼女のやっていることは。
「もうあなたに用はないわ」
「何だよそれ!」
フィーネが掌をこちらに向ける。すると、あちこちに散らばっていたネフシュタンの鎧が粒子化し、フィーネの手に集まり、消えた。
それで用はすんだとばかりに、それこそ本当に雪音クリスなどどうでもいいというように、フィーネは緑林地帯の中へと消えた。
「待てよ、フィーネ! フィーネッ!!」
追おうとしたクリスに対し、ケイはとっさに声を上げていた。
「待ってくれ、雪音クリス!」
クリスはこちらをふり返った。歯を食いしばり、今にも泣き出しそうな顔で。
「俺の友達で、NGO活動で紛争地帯に行った奴がいた。このギアもそいつから貰った物だ。メールもない、手紙だって出しても届かない率のが高いような国へ行った。武器なんて持たずに、体一つで飛び込んだ」
「……何が言いたいんだ」
「そいつを知ってるから分かるんだ。雪音がやってることは、絶対に戦争を無くさない」
「――ッッ!!」
今日までの行動を否定されたクリスはショックを受けているように見えた。
クリスはケイを睨み、踵を返して跳んで――消えた。
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