3部分:第三章
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ですか」
「そうです、私はそちらに向かいます」
にこりと笑ってそう述べた。
「もう一人ですので」
「何はともあれ斉を去られるのですね」
「はい」
返事にも淀みがない。
「今までお世話になりましたが。これで」
「そうですか、寂しくなりますね」
田縦は聶政の言葉を聞いて残念そうに言葉を出した。
「またお会いできればいいのですが」
「残念ですがそれは約束出来ません」
聶政は顔をあげてこう言った。
「申し訳ありません」
「・・・・・・聶政殿」
田縦はそこに何かを感じた。そして彼に言った。
「志をお持ちなのですね」
「それが義です」
彼は言う。
「この花の義です」
「菊ですか」
彼もその黄色い菊を今見た。
「小さな、それでいて奇麗な菊ですね」
「私はこれさえあればいいのです」
静かにそう述べた。
「黄花が一輪あれば。それで充分です」
「ではその花と共に行かれるのですね」
「もうここに返って来ることもありませんが」
「では最後に宜しいでしょうか」
聶政の気持ちを汲み取った。田縦は引き留めはしなかった。だがそのかわりに。
「別れの盃を」
「宜しいのですか」
「いえ、こちらこそお願いした程です」
彼は言う。
「是非共」
「私の様な追われる者に」
「追われていようと義士は義士です」
そしてこうも言った。
「その義士をもてなすことはまたとない名誉です。ですから」
「わかりました。では」
聶政は盃を受けることにした。そして二人で最後の別れの酒を楽しむのであった。
別れの宴が終わると聶政は斉を後にした。田縦はその後姿を何時までも見送った。その姿が完全に見えなくなるまで。何時までも何時までも。
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