2部分:第二章
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土産にもなりはしない、嚴仲子はそう言って断ろうとした。しかし。
「いえ、あの花こそが欲しいのです」
聶政はそう言って引き下がろうとしない。存外引かない様子であった。
「他のものはいりませぬ故」
「本当にあれだけでよいのですね?」
「ええ」
やはり言葉は変わらなかった。
「宜しいでしょうか」
「わかりました、そこまで仰るのなら」
嚴仲子は頷いた。ここは客人としての彼の心を汲み取ろうとしたのだ。
「どうかこれを」
「申し訳ありませぬ」
「いえいえ。しかし菊がお好きなのですな」
「ええ、黄色い菊が」
聶政はそれに答える。
「花では一番好きです。母上と姉上によく頂いたものですし」
「そうだったのですか」
「子供の頃ですがね。今では懐かしい話です」
そう語る顔が優しげになった。とても剣客のものとは思えない。
「その頃を思い出すのですよ」
「そうだったのですか。ではお受け取り下さい」
「はい」
聶政は菊を受け取った。そして屋敷を後にした。嚴仲子はそれを最後まで見送るのであった。最後の最後まで礼を忘れてはいなかった。
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