第二百十五話 母子の和その九
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「わしはな」
「そして最上家も」
「あの家との因縁も」
「それは終わるな」
政宗は己のその因縁の中でだ、これについては一番楽観していた。それでこうあっさりと言ったのである。
「完全にな」
「このことはですか」
「間違いなく、ですな」
「終わりますか」
「安土で」
「どうということはない」
やはり素っ気なくさえある言葉だった。
「向こうももう野心はない」
「だからですか」
「安土で、ですか」
「手打ちになりますか」
「そうなる」
「では最上殿とは」
「最早」
二人で政宗に問うた。
「戦も謀も」
「いずれも」
「そうじゃ、どちらもない」
これまでの様にはというのだ。
「ないわ」
「それは何よりです」
「最上家との戦はこれまで激しいものでした」
「それをしないで済むのなら」
「有り難いことです」
このことは最上とのことだけではない、二人はここでこの者のことも話に出したのであった。その者はというと。
「佐竹殿との戦も激しく」
「相当骨が折れました」
「それでもですな」
「あの家とも」
「うむ、争うことはない」
むしろ伊達にとてはだだ、最上家よりも佐竹家もっと言えば当主である佐竹義重の方が厄介な相手であった。
それでだ、政宗も言うのだ。
「佐竹との戦もな」
「相当にですな」
「激しい戦でしたな」
「これまであの家とも何度も争いましたが」
「蘆名家も介して」
磨上原然りだ、蘆名家の後ろには佐竹家もいて事実上あの戦も伊達と佐竹の戦と言えるふしがあったのだ。
「しかしそれもですな」
「あの家との戦も終わり」
「そして、ですな」
「これからは当家も」
「泰平の中に生きますな」
「そうじゃ、だから最上家とも戦を終わってな」
そして、というのだ。
「後はじゃ」
「はい、その後は」
「政ですな」
「我等の領国を富ませましょう」
「これまでよりも遥かに」
二人も政宗に対して言う。
「必ず」
「領国をよき国にしましょうぞ」
「そうしようぞ、これからは」
政宗もそのつもりだった、天下を諦めた彼は国に目を向けていた。彼が治めるその国を。そうしたことを話しつつ安土に着いてだ。
彼はまずは義光と会い信長のいるその場で盃を交わした。そうしてお互いに鋭い目で約をしたのだった。
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