暁 〜小説投稿サイト〜
K's−戦姫に添う3人の戦士−
2期/ヨハン編
K13 切り刻んであげましょう
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 融合症例一号と調・切歌との戦闘から数日。彼女たちは、ナスターシャとヨハン立ち合いの下、ウェルのメディカルチェックを毎日受けた。

「オーバードーズによる不正数値もようやく安定してきましたね」

 切歌が診察台から起き上がる。ヨハンはすぐさま用意していたバスタオルを、半裸の切歌の肩からかけた。

「よかった。これでもう足を引っ張ったりしない」

 生きるか死ぬかの瀬戸際だったというのに、調は心からそう言っている。

「調が足を引っ張ったなんて一度も思っていないよ。マムもマリアも、僕もね」
「うん。ヨハンがそう言ってくれるから、ちゃんとギアを纏える体に戻れてよかったと思うの」

 調の気遣いがヨハンを嬉しくさせる。
 ヨハンはそっと調の頭を撫でた。のどを撫でた猫のように調は目を細めた。

「LiNKERによって装者を生み出すことと同時に、装者の維持と管理もあなたの務めです。よろしくお願いしますよ」
「分かってますって。もちろんあなたの体のことも」

 相変わらずナスターシャとウェルのやりとりは険呑である。

 不意に、暗く沈んだ面持ちだった切歌が、息を呑んだ。恐ろしいものを見つけたかのような。

「切歌っ」
「…っ、ヨハン…」

 切歌はバスタオルの袂を握り、何かを訴えるように口を開くが、また俯いた。先より心持怯えを呈して。

 ヨハンは目線で調に問うが、調もとまどいを浮かべるばかりだった。






 “フィーネ”の魂の器は自分かもしれない。

 その可能性を知ってから、切歌は文字通り夜も眠れない日々を送っていた。眠ると二度と目覚められない気がして、怖くて怖くて。寝るまいとアレコレ努力する間にいつのまにか眠っていた。そんなパターンのくり返し。
 おかげで体調は最悪。その気怠さから解放されたい欲求と、自我が消える漠然とした恐怖が自分の中でせめぎ合い、いつか壊れてしまう気がした。

 自室にてベッドの上で膝を抱えていた切歌。

(外に出てみよう。ちょっとは気分転換になるかも)

 切歌は靴を履き、自室を出てエアキャリアのハッチへ向かった。

 ハッチを開けるなり、土と草のにおいがする風が切歌を撫でた。その風に乗って聞こえるこれは、笑い声だろうか。

 切歌は風が吹いてきた方向へと歩き、湖畔に出た。

「切歌」
「おはよう、きりちゃん。もうお昼だよ」
「何……してるデスか、二人とも」
「「散髪」」

 調は安っぽい折り畳み椅子に座り、パステルピンクの半透明レインコートを前後逆に着て、髪を下ろしている。その調の後ろに立つヨハンの手には、鋏。

「切歌もやる? ちょうど調が今終わったところだから」

 そういえば日本に来てからずっと髪の手入れなどして
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ