7部分:第七章
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第七章
「右手は大丈夫か」
「ああ、引っ掻かれただけさ」
見れば肘のうえ辺りから鮮血を流している。しかし指は動いていた。血に塗れながらもそれは何とか満足に動いているのであった。
「けれど今は斧は持てない」
「そうか」
「この斧は左手だけじゃ振れねえ」
「いいか」
ここでバーナムは額に脂汗を流し追い詰められた顔になっている彼に告げた。
「俺がネットを投げる」
「ネットをかよ」
「こんなこともあろうかともう一つ持って来ていた」
言いながら腰に巻いてあったそれを左手で外した。そうしてそれを左手に持つのだった。
「これをだ」
「それでネットで捕まえるのか」
「動けなくする」
そうするというのである。
「いいな、それでだ」
「それで?」
「投げろ」
こう告げるのだった。
「振れなくても何とか投げることはできるな」
「ああ、それはな」
できると返した彼だった。
「できそうだ」
「それじゃあ投げろ」
また彼に告げた。
「それで一撃で決めろ。いいな」
「一撃かよ」
「戦いは一撃で決まるものだ」
だからだというのである。
「わかったな。それでだ」
「その言葉信じていいんだな」
ステンシウスはまだ追い詰められた顔だった。冷静な面持ちのバーナムとは正反対だった。その顔で彼に対して問うてきたのである。
「それで」
「信じたくなければそれでいい」
そのステンシウスに素っ気無く返したバーナムだった。
「だが。生き残りたいな」
「ああ」
「勝ちたいな」
「勿論だ」
ステンシウスの返答は決まっていた。
「剣闘士だからな」
「ではそうするようにすることだ」
これが彼の言いたいことだった。
「わかったな」
「ああ、わかった」
彼のその言葉に頷いたステンシウスだった。
「じゃあ。信じさせてもらうぜ」
「やるぞ」
彼の言葉を受けてすぐだった。
バーナムは左手で持っているネットを豹に向かって投げた。それで獣の動きを封じた。
それに動きを合わせてステンシウスも斧を投げた。左手で斜め上から思いきりであった。
斧は激しく回転し豹に襲い掛かる。そうしてその眉間に深く突き刺さったのだった。
「若いの、助かったな!」
「危ないところだったな!」
「しかしよくやった!」
彼にも歓声が送られた。
「今も見事だったなバーナム!」
「いい助けだったぞ!」
「やっぱりあんたが一番だ!」
バーナムにも歓声が送られる。彼はそれを静かに聞いていた。ステンシウスはその彼に顔を向けてそのうえで声をかけるのだった。
「なあ」
「どうした」
「悪いな」
こう言って礼を述べてきたのである。
「助かった。あんたのおかげでな」
「困った時はお互い様だ」
だ
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