第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
15話 虚像と齟齬
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も知れない。真に情報を知る別のレアエルフが存在している可能性もある。というより、この問題に立ち向かうのも良いのだが、解明より先にこの階層が攻略されてしまえば、《召集》スキルの危険度が途端に鳴りを潜める可能性だってあるのだ。そうなってしまえば、この調査も意義を失してしまうだろう。
「………もしかしたら、これ以上調べても無駄かもナ」
壁に寄りかかり、腕を組むアルゴは、俯いたフードの内側から力なくごちる。その声音からは色濃い悲壮感が伝わる。腕利きの情報屋である《鼠》のアルゴが漏らした弱音を、お蔵入りを止む無しとする免罪符として受け入れようとする諦観がある傍らで、それでいいのかと燻るもどかしさがあるのもまた事実だった。
アルゴの無念を晴らしてやりたいという感情が、犠牲者が出ているという現実が、この一件を放置していいものではないと訴えてくる。納得出来るわけがない。
「アルゴ、昨日のPTの居場所って判るか?」
「判るケド、何か気になる事でもあるのカ?」
「当時の状況を少々な。目星があるわけじゃないけど、まだやれる事はいくらでもある。諦めるには早い。そうだろ、情報屋さんよ」
「ニャハハ………リンちゃんにそこまで言われちゃ、オネーサンも頑張らなきゃダナー」
そう、まだ終わってなどいない。《召集》スキルなるギミックが完全に空想の産物と決したわけでもない。それを断ずるにも、情報が少なすぎるのだ。ならば行動あるのみと、アルゴは昨日のPTの居場所をスクロールに記して足早に去って行った。本来ならば五百コルは下らない情報だろうが、必要経費とばかりに置いて行ってくれた。ヒヨリにはティルネルの世話を頼み、そのまま残された地図を片手に目的地へと向かう。
所在は余所の大樹である上に、かなり高層に居を構えたらしい。記憶が定かであれば、第三層において頂点を争うほどグレードの高い物件であるが、相応に料金も取られる高級志向のものだ。しっかりと狩りをしていなければ宿代は確保出来ないだろう。その点から察するに、彼女達――――昨日のPTは意欲的に戦闘に励んでいたのだろう。事実、こうして高級物件に泊まり続けていられるのだから、戦闘における実力は確かなはずだ。個々の連携もさぞ強固なものだったに違いない。叶う事ならば、犠牲者が出る前に、更に欲を言えばボス攻略の場でも顔を合わせたかったものだ。
「………ここか」
西側の大樹の最上層で見晴らし良好、かなり広い間取りに、確か露天風呂のオプションがあったと聞き及んでいる。低層という条件さえなければこの物件を確保しようとしたものだが、アルゴの情報、彼女達が三層に到達した時期を考慮すれば、既に先客として取られていたことになる。その嗅覚たるや、ますます惜しいと思いつつドアをノックして応答を待つ。
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