4部分:第四章
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第四章
「それは」
「わからないって自分でもかい」
「何かな。それはな」
「わからない。しかし何かを見ている」
このことをまた言った。
「何かをだ」
「戦って物凄い報酬と名声を手に入れる」
「下手したら死んでそれまで」
仲間達はその剣闘士の生き様を話した。
「それでいいんじゃなくてか」
「まだあるのかい」
「あるかも知れない」
彼はこう言うのだった。
「まだ何かが」
「何かって何だよ」
「一体」
「少なくとも戦いの中にある」
それはおぼろげながら感じていることであった。
「それはな」
「何かよくわからないけれど戦いは続けてくれるんだな」
「剣闘士の仕事は」
仲間達はそれを確かめずにはいられなかった。やはり仲間として意識しているからだ。それでこのことを再び確かめたのである。
「それならいいけれどな」
「それでな」
「ああ。明日も出る」
彼は言った。
「そして戦う」
「あんた明日は鰐と戦うんだったかな」
「象だったか?」
最近のコロシアムでは人間同士が戦うより野獣と戦う方が主になっている。彼も最近では野獣と戦う方が多くなっているのである。
「それとも豹だったか?」
「何だった?」
「確か若いのと組んで豹を相手にすることになっている」
明日のことを思い出してから述べたバーナムだった。
「そうなる話だ」
「そうか。豹か」
「それも若いのと組んでか」
「まだ十六だったか」
その若い剣闘士の年齢を思い出しながら仲間達に話した。
「確かな」
「十六!?じゃあ成り立てだよな」
「そうだな」
「そうだ。まだ正式に剣闘士になったばかりだ」
まさにその通りだというのだった。
「やっとな」
「若いのか。じゃあ何かと教えてやらないとな」
「フォローとかしないとな」
「ああ、そうしないとな」
頷きながらその剣闘士としての戦いのことを思うのだった。
剣闘士は戦いの中に生きている。それはそのまま死と背中合わせということだ。彼はその生と死についても今ここで思うのだった。
「死ぬからな」
「俺達同士で戦うことはないにしてもな」
「それでも死なないに越したことはないからな」
彼等の仲間はグループになっていてそのグループの中では戦うことにはなっていない。戦うのは別のグループということになっているのだ。
しかしであった。それでも彼等は話をした。その若い剣闘士のことをだ。
「それでだよな」
「その若いのをできるだけ死なさない」
「その努力をしないとな」
「どうするかだな」
彼は今度はこのことを考えていた。
「若いのはすぐに前に出る」
「考えずにな」
「自分のことも相手のことも」
そのこともよく知っているのだった。血気にはやって無謀な行動
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