第149話 冥琳洛陽入京
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常識的に考えて儒学に造詣が深い劉表が清河王である正宗を殺そうとするなど余程のことがなければ考えようとするはずがない。
劉表が中央にいた時に正宗と確執があったとも聞かない。王允は荊州の事情に通じていないため、劉表が美羽に孫堅打倒のために協力を要請していることを知らない。仮に知っていたとしても美羽が劉表に協力することを拒否したからといって、一足飛びに美羽の義従兄である正宗を殺そうと行動するにはかなり無理がある。
王允の心中では劉表は正宗の暗殺計画の蚊帳の外で蔡瑁が主犯と考えているに違いない。だからこそ王允は劉表に対して擁護的なのだろう。
「ですが、蔡徳珪殿は夫を二度も暗殺しようとしたのです。如何に情報が伝わるのに時間がかかるとはいえ、荊州随一の規模を誇る南陽郡を揺るがす大事件。これを劉荊州牧は知らないというのは奇妙でございます」
冥琳は王允に厳しい言葉を投げかけた。
「それは憶測であろう。確たる証拠はあるのか?」
王允は憶測のみで劉表を疑うことに消極的な様子だった。これが劉表でなく董卓であれば態度も違ったかもしれない。だが、彼女の様子は自分を納得させるように言っているようにも見えた。冥琳は彼女の心の動揺を察したのか手荷物から布に覆われた一本の矢を彼女の前に差し出した。
「これは?」
王允は冥琳の差し出した布に包まれたものを訝しんでいた。
「劉車騎将軍の命を狙った矢でございます」
冥琳は神妙な表情で王允に言った。
王允は驚いた表情で差し出された物を凝視した後、恐る恐る受け取り布の中から矢を取り出した。彼女は矢を凝視するが、鏃の部分で目が留まり凝視していた。鏃の部分は明らかに鉄の色でなく、何かを塗布しているように見えた。勿論、塗布物は既に乾いているため鉄が変色しているだけにしか見えない。
「これは血なのか? 劉車騎将軍はお怪我を追われたのか?」
王允は心配した表情を浮かべ冥琳に質問した。冥琳は黙ったまま顔を左右に振り否定した。
「この矢の鏃に塗られた物は毒にございます。この場に持参したのはこの一本のみ。夫が馬で遠出をされたおり、蔡徳珪の放った刺客達により大量の矢で殺されかけたのです!」
冥琳は感情を高ぶらせ王允に強く主張した。
「な。何だと!?」
王允は冥琳の言葉に絶句していた。毒矢を使い正宗を殺そうとした。状況の説明を聞く限り、正宗を確実に殺すことが目的だったことは間違いない。蔡瑁の正宗に対する憎しみの深さを王允は理解した。
「まことに毒なのか?」
王允は動揺した口調で確認するように冥琳に聞いた。その表情は疑っている気配は無かった。
「お疑いであれば毒であるか実演いたします。屋敷の方に生きた魚・獣何でもいいのでご用意してください
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