第149話 冥琳洛陽入京
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するなど狂気の沙汰。何を考えているのだ。そんな真似をすれば劉荊州牧にも累が及ぶことなど容易に想像できるであろう。荊州は洛陽から比較的近い。その地の豪族がここまで阿呆とは。考えたくはないが朝廷の権威はそこまでに失墜しているのだろうか」
王允は顔を伏せたまま両手で多い顔を覆い嘆いていた。蔡瑁の所業が彼女には余程堪えのかしばらく打ちひしがれ、冥琳は嘆く王允が落ち着くのを待った。
「今後、劉車騎将軍はどうなさるおつもりか?」
王允は漸く気持ちが落ち着き冥琳に正宗の今後の方針について尋ねてきた。彼女も正宗が面子を守るために黙っていないと考えているのだろう。正宗はわざわざ彼女のもとに信頼のできる者を使者として送ってきた。この意味することは穏便な対応でないことは容易に想像がつく。事実、彼女は神妙な表情で冥琳を見ていた。
「蔡徳珪を賊として討伐するつもりです」
「それだけか?」
王允は冥琳の答えに質問してきた。
「それだけです」
「劉車騎将軍は劉荊州牧の扱いをどうするおつもりなのだ?」
王允は冥琳の返答に満足できなかったのか、彼女から具体的な質問をしてきた。
「夫は劉荊州牧に疑念を抱いているのは事実です。ですが劉荊州牧が蔡徳珪殿の討伐を静観されるのであれば劉荊州牧の件は不問にいたします。しかし、義妹・蔡徳珪殿を庇い立てするのであれば同罪として討伐しなければならなくなるかもしれません」
「周太守、劉車騎将軍に劉荊州牧の討伐をご自重いただけるように願い出てはくれないか?」
王允は冥琳に劉表の助命嘆願に協力して欲しいと頼んできた。王允は劉表の立場上、義妹である蔡瑁を見捨てることはできないと考えているのだろう。もし、義理とはいえ身内である蔡瑁を見捨てれば、荊州における劉表の名に傷がつく。幾ら罪人であろうとだ。少なくとも形だけでも蔡瑁の助命嘆願のために動かざる負えない。中央での経験もある劉表のことである。最後は苦渋の決断で蔡瑁を切り捨てる可能性が高いが、その段階で正宗が劉表を許す保障はない。王允が心配しているのはそこだろう。
「王司徒、何故に劉荊州牧を庇われるのですか? 個人的なお付き合いでもおありでしょうか?」
冥琳は王允に言った。彼女は王允に気づかれないように観察するような視線を送った。
「個人的な付き合いはない。ただ私と同じく清流派の士大夫であり儒学にも通じている教養がある方だ。その人物が劉車騎将軍を殺そうなどとするとは到底思えない。不埒者一人の命で劉荊州牧を破滅に追いやるなど慙愧に堪えないのだ」
王允は苦悩している様子だった。
王允の言う通り劉表は教養人である。儒学に造詣が深いため、荊州では名士政策を行なっていた。そのため在野の無名の士人を重用することには消極的だった
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